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自殺のあった家屋や部屋の遺品整理-手順や費用・注意点-

家屋

日本における自殺者数は2021年段階で21,000人を越え、現在も毎日90人以上が自殺という形で亡くなっています。ご親族の方の自殺であったり、賃貸物件の借り主の方が自殺された…このようなケースは、日本では他人事では無いのです。

近しい方の自殺という衝撃や悲しみを受けつつも、残された人々は自殺後の家屋の遺品整理や片付け等の手続きを行わなくてはなりません。自殺の場合には一般的な事例とは遺品整理の手順、注意点等が異なりますので、その点に注意が必要です。

また自殺の場合の遺品整理の費用についてお悩みの方も多いことでしょう。ここでは自殺というケースにおける遺品整理の手順、注意点、費用相場等について詳しく解説していきます。

自殺のあった家屋・部屋の遺品整理の流れ

家屋内で自殺があった場合、遺品整理を行うまでにはいくつもの手続きが必要となります。まずは大まかな流れについて見ていきましょう。

1.ご遺体の発見・警察への連絡

自殺の場合のご遺体の発見は、ご家族や連帯保証人、または大家・不動産管理会社+警察によるものとなります。

同居人が居る場合

ご家族または同居人によるご遺体の発見

警察への連絡

独居の場合(親族に連絡が取れる場合)

連絡不通・異臭などの異状あり

ご家族または連帯保証人への連絡

ご家族または連帯保証人が入室

ご遺体の発見

警察への連絡

独居の場合(親族に連絡が取れない場合)

連絡不通・異臭等の異状あり

ご家族・連帯保証人への連絡取れず

警察へ連絡

大家または不動産管理会社+警察が入室

ご遺体の発見

故人が同居の場合ですとご遺体の発見が比較的早いです。しかし独居の場合だとご遺体に数日~一週間以上かかることもあります。大家さん・不動産管理会社は、新聞や郵便物の溜め込み、異臭・虫害等の異状が見られ次第、速やかに親族(または警察)への連絡を取ることが大切です。

2.死亡確認・検死

ご遺体を発見次第、部屋の中のものには手を触れず、すぐに警察に連絡をします。警察による死亡確認後、ご遺体は警察により引き取られ「検死」が行われます。

これは自殺のみならず、事故死や孤独死の場合でも同様です。ご遺体の発見を不動産管理会社や警察が行った場合には、この間にご遺族に連絡が入ります。

3.事件性の確認中に業者選定

自殺の場合、警察の検死や調査によって「事件性があるか」の確認が行われます。「事件性が無い」と確認されるまでは、遺品整理等の部屋内部の片付けは行うことはできません。

ご遺族等はこの間に、家屋の「特殊清掃」「遺品整理」等の業者の選定、見積もり、申込み等を行うことになります。

4.特殊清掃(現状回復)

自殺の場合、ほとんどのケースでは遺品整理の前に「特殊清掃」が必要となります。特殊清掃とは、ご遺体の腐敗・腐乱等による家屋の汚れや悪臭等の除去、ならびにダメージを受けた家屋の現状回復等を行う作業のことです。

特殊清掃の一例 体液等の付着した品の除去、撤去
腐敗臭の除去(消臭、オゾン脱臭)
除菌処理
亡くなった場所の床の変色の除去、清掃
亡くなったバスタブの変色のクリーニング
床や壁の張替え(リフォーム) 等

ご遺体までの発見が遅くなるほど腐敗は進み、部屋全体に「死臭」と呼ばれるニオイが染み付いた状態になります。よほど早期にご遺体が発見された場合を除いては、原則として特殊清掃は専門の業者に依頼をするのが一般的です。

特殊清掃(現状回復)が終了するまでは、残念ながら一般の方は脚を踏み入れるのも辛いような状態です。ご遺族自身で遺品整理を行う場合、特殊清掃が終了するまでは遺品整理は行えないと考えた方が良いでしょう。

なお特殊清掃と遺品整理の両方を行える業者の場合には、ある程度の遺品整理を特殊清掃と並行できる場合もあります。

5.遺品整理

遺品整理とは、故人がのこした家具や家財等のすべてを分類し、片付けていく作業のことです。遺品整理の工程では、まず次のようにご遺品を分類していきます。

  1. 貴重品:現金や有価証券、通帳、貴金属品等
  2. 思い出の品:故人の愛用品、写真など
  3. 譲渡品、形見分けの品:アクセサリー、貴金属品等
  4. リサイクル・リユース可能な品:家電、趣味のコレクション等
  5. 不用品:食器、リネン類、雑誌、その他不要な家具等

「遺品」は「遺産」とは異なり、故人がお使いになっていた家財すべてを指します。貨幣価値等の無い品物についても、ひとつひとつ分類し、片付けていく作業となるのです。

独居の方でも、家財すべての物量は2トントラック以上が平均的と言われています。遺品整理の作業は「引越しをすべて自分で行う」よりも大変な作業と言えるかもしれません。遺品整理の専門業者に依頼をした場合、貴重品等の他、思い出の品等は指定をしておけば探索して貰えます。

遺品に腐敗臭が付いている場合

自殺後の遺品整理では、遺品の多くに死臭が染み付いてしまっていて、整理作業が非常に困難となることも多いです。ご遺体発見までに時間がかかった場合には、特殊作業だけでなく「遺品整理」もまとめて専門業者に任せた方が、ご遺族の物理的労力ならびに精神的な疲労を軽減できます。

6.不用品の処分

一般的な遺品整理の場合、ご遺族が今後お使いにならない品物については、適宜、処分の手続きを行います。

  • 粗大ごみとなる品物 → 粗大ごみの廃棄方法は自治体により異なるため、故人の住宅がある自治体の廃棄方法を確認
  • その他の一般ごみとなる品物 → 故人の住宅がある自治体のゴミ捨て曜日を確認の上廃棄するが、大量となる場合には事前に自治体に相談
  • 家電リサイクル法対象品目 → エアコン、TV、冷蔵庫、洗濯機等。小売店に引き取りを依頼するか、自治体に問い合わせ、指定引取場所に持込
  • リサイクル可能な品物 → 中古書店、リサイクルショップ、ネットオークション等

※遺品整理の専門業者に依頼をした場合には、不用品の処分はまとめて行なって貰えます。またリサイクルショップ等と提携している業者の場合には、状態の良い品物の買取も行なえます。

リサイクルや通常の処分が難しいケースも

自殺後、ご遺体発見までの日数が長期経過していた場合は、ご遺品の多くに腐敗臭が付着しているため、リサイクル・リユース等は行えません。また遺品についたニオイの状態等によっては、自治体の粗大ゴミ回収等を利用するのが難しい場合もあります。

この場合は遺品整理業者に依頼をし、できるだけまとめて速やかに不用品を回収してもらったほうが良いでしょう。貴重品等をのぞきすべて廃棄処分となることは、事前にご了承ください。

7.遺品供養

仏壇や人形、故人の愛用品等、ゴミとして処分するのが忍びない品物については、物品供養を行う方も多いです。物品供養は通夜・葬儀・法事等を執り行う菩提寺に依頼する方も多いですが、寺院によっては物品供養を行わないこともあるので、事前に確認した方が良いでしょう。

また近年では、遺品整理業者が寺院や僧侶と提携し、ご遺品の供養を代行して行うサービスも需要が増加しています。特にご遺族が自殺された場合、「遺品供養をしたいが遺品に触れるのが辛い」という方が多いです。遺品供養まですべておまかせできる遺品整理業者を検討しておくと良いでしょう。

自殺による遺品整理の費用

自殺があった家屋・部屋の遺品整理の費用について、料金相場等を見ていきます。

自殺の特殊清掃・遺品整理の料金相場

自殺があった家屋・部屋の場合、特殊清掃および遺品整理にかかる費用の相場は「6~7万程度」で収まる場合から「50万円以上」になるほど、非常に幅が広いです。

これは自殺後の部屋を遺品整理する前に行う「特殊清掃(現状復帰)」にかかる費用が、ご遺体の発見までの日数(腐敗の進み方)やお部屋の現状によって大きく変わってくるためです。

特殊清掃の費用相場

床上特殊清掃 40,000円~
消臭剤・除菌剤散布 15,000円~
浴室特殊清掃 40,000円~
オゾン脱臭 1日あたり35,000円~
畳の撤去 1枚あたり4,000円~
スタッフ作業費 1人あたり20,000円~
床張替えリフォーム 15万円~
壁紙張り替えリフォーム 60,000円~

※費用相場は1R~1K(6~8畳)の場合。間取り・広さによっても料金は段階的に上がります

ご遺体の発見までが早ければ、比較的簡易な床清掃と脱臭作業のみで終わることもあります。この場合には特殊清掃の料金は数万円程度で済むケースも珍しくありません。

しかしご遺体発見までに1ヶ月近くもかかった場合は、ご遺体の腐乱が床下まで進む他、腐臭が取れなくなります。床の張替えだけでなく床下までの工事を行うなど、大掛かりな工事が必要になるのです。この場合には、特殊清掃(現状復帰)までの費用が100万円近くになることもあります。

遺品整理の費用相場

1R~1K 50,000円~80,000円
1DK~2K 90,000円~130,000円
1LDK~2DK 130,000円~170,000円
2LDK~3DK 170,000円~210,000円
3LDK~4DK 210,000円~250,000円
4LDK以上 250,000円~

特殊清掃後の遺品整理(家財の分類・片付け・不用品処分)等の費用相場は概ね上記のとおりです。なお特殊清掃と遺品整理の両方を同じ業者にまとめて依頼した方が、遺品整理にかかる費用を抑えやすいです。

特殊清掃・遺品整理の費用は誰が支払うのか

自殺によって発生した特殊清掃・遺品整理の費用は、原則として故人の賃貸借契約の連帯保証人、または遺産相続人等が支払い義務を負うことになります。

ただし、故人の法定相続人が「相続放棄」の手続きを正式に行なった場合には、相続人による支払い義務は発生しません。

自殺による遺品整理の注意点

警察の許可が出るまで遺品を動かさない

ご親族の中には、「この品は他人に見られるのが辛いのでは」等とお考えになり、故人の日記やスマホ等の遺品を動かしたり、自己判断で処分しようとされるケースが見られます。

しかし警察による検視が終了するまでは、遺品を勝手に動かしてはいけません。「あるはずの遺品が無い」といった問題が起こると、事件性の有無が確認できず、捜査がいたずらに長引いてしまうためです。

ご遺体の発見後、警察の許可があるまでは、故人のご遺品の自己判断による取得や廃棄、探索などは行わないようにしましょう。

特殊清掃前は無防備に部屋に入らない

特に一人暮らしの方が自殺された場合、ご遺体の発見までにはかなり日数が経過する事例が多いです。ご遺体の腐敗・損傷が激しいと、お部屋全体には強い死臭(悪臭)が付きます。

マスク無しなどで入室されたご親族の方が、数分もしないうちに体調を崩してしまうという可能性が非常に高いのです。特殊清掃が終了するまで、マスク等無しでお部屋に入らないことを強くおすすめします。

遺品に手袋無しで触れない

ご遺体の状態によっては、体液が様々な遺品に付着してしまっていることがあります。体液や悪臭の付いた手でその他の部分に触れると、死臭による被害がどんどん拡大されてしまうのです。

ご遺品に触れる時には、必ず使い捨ての手袋をはめましょう。また腐臭のある遺品に触れた後にはすぐに手袋を廃棄し、新しい手袋に付け替えます。なお足元についても同様で、靴カバーを必ず付けるようにしましょう。

特殊清掃終了まで窓を開けない

自殺後のお部屋では強い悪臭(腐臭)が漂うため、親族の方が窓を開けてしまうケースが多いです。しかし特殊清掃作業が終了するまでは、窓は絶対に開けてはいけません。

これは死臭(腐敗臭)が一気に近隣地域に漂い、定着してしまう恐れがあるためです。マンション内の悪臭被害が拡大した場合、除菌・消臭作業の費用がどんどん嵩むことになります。

また隣室のベランダに置いてあった物品や洗濯物、隣家の庭の物干し等に腐敗臭が付着してしまった場合、その損害を賠償しなくてはならないケースも。専門業者による特殊清掃等が終了し、「窓を開けて良い」という許可が出るまでは、密閉空間で作業をしなくてはなりません。

おわりに

自殺のあった部屋の遺品整理は、ご遺族にとって物理的に辛い負担を強いるだけでなく、精神的にも大きな負担となるものです。大切なご親族を自殺で失った直後は心の整理もつかず、「遺品を目にするだけでも辛い」という方が少なくありません。

自殺に限らず、ご遺族の急死の時には、通夜葬儀等の様々な対応が必要となります。「すべてを自分たちで何とかしなくては」と無理をせず、「頼れる場所は信頼できる専門家に任せる」という考え方をお持ちになることが、心の傷を癒やすことにも繋がるのではないでしょうか。

 

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