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争続防止!遺産分割協議書の作り方と注意点

遺産分割協議書の作り方

遺産相続の際には、思いもよらない親族同士でのトラブルが起こりがち。後から相続をしたい人間が名乗り出てきたり、分割の仕方で揉めたり……あまりにもこのような事例が多いため、「相続の際の争い」という意味から「争続(そうぞく)」と言った俗語までが作られてしまうほどです。

一度争続トラブルが起きると、最悪の場合には裁判沙汰になってしまうだけでなく、その後の親族関係にも大きなヒビが入ってしまいます。遺産相続によるトラブルを防止する対策として、「遺産分割協議書」をきちんと作成しておきましょう!

ここでは遺産分割協議書の具体的な作成手順や、注意点について解説していきます。

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書Google検索:遺産分割協議書 テンプレート

遺産分割協議書(いさん・ぶんかつ・きょうぎしょ)とは、法定相続人が相続財産の分割(分け方)について話し合い、その分割内容や割合について示した書類のことを言います。

  • 遺言書が無い場合
  • 遺言書に記載されていない資産が発見された場合
  • 民法規定とは異なる割合で遺産分割を行う場合

上のような場合には、遺産分割協議書を作成しておいた方がトラブルを防止できます。

遺言書があれば協議書は不要?

法律に則った形で作成された遺言書があり、その記載で「すべての遺産相続の分割内容」が指示されている場合には、遺産分割協議書は要りません。遺言書による故人の意思表明が最も強い証書となるためです。

ただし、次のような場合には遺産分割協議書があった方が争続防止に繋がるため、作成を強くおすすめします。

遺言書の記載の無い資産の相続時に

遺言書では、必ずしもすべての遺産の分割が指示されているとは限りません。たとえば「土地」「家屋」等の大きな資産については誰に譲るかが遺言として示されていても、株券、貴金属品、高級自動車・骨董品等となると、記載漏れをしてしまうケースが多々見られます。

特にある程度の資産がある人の場合、土地家屋や現金以外にも資産価値がある遺産があり、遺言書から漏れたそれらの相続財産がトラブルの元となりがちです。

資産価値がある遺産についてはそれぞれ遺産分割協議を行い、協議書に記載しておいた方が良いでしょう。

遺言書に不備があった場合に

故人が作成した遺言書は、弁護士等の専門家の元で作成したものであれば法的効力があるものとみなされます。しかし個人的に制作した遺言書の場合、なんらかの不備があり、法的効力に欠けるとされてしまうケースも多いです。このような場合にも、トラブル防止のために遺産相続協議書の作成が求められます。

法定相続人とは?全員の許可が必要!

遺産分割協議では、法定相続人となる人の全員による話し合いと認可が必要となります。ここでいう「法定相続人」とは、故人の配偶者および血族ということになります。

  • 故人の配偶者:必ず法定相続人になります。
  • 第一順位となる血族:故人の子ども。死亡の場合には代襲相続人(故人にとっての孫)
  • 第二順位となる血族:故人の両親(親)。親の死亡の場合には、直系である祖父・祖母。
  • 第三順位となる血族:故人の兄弟姉妹。兄弟姉妹の死亡の場合には、代襲相続人(故人にとっての甥・姪)。

つまり原則として「故人の祖父祖母。両親、兄弟、子、孫、甥姪」までの親族は、法定相続人となりうるわけです。

遺産分割協議書では、法定相続人全員の許可と実印の捺印・署名が必要となります。遺産分割協議を行う前に、まず故人にとっての法定相続人が誰になるのかをピックアップし、きちんと連絡を取り合っておきましょう。

親族同士での付き合いが無く、法定相続人が選定しきれないといった場合には、弁護士等の専門家を頼りましょう。連絡可能な親族だけで遺産分割協議を行うと、後から思わぬトラブルが生まれます。

協議書は相続手続きで必要となる?

不動産や預貯金・株券等の遺産相続時には、銀行等の機関における相続手続きが必要になります。この際、法的効力のある遺言書が無い場合、遺産分割協議書の提示が求められることも多いです。

遺産分割協議書の作成方法

では具体的な遺産分割協議書の作成方法について見ていきましょう。

協議書作成はパソコン?手書き?

遺産分割協議書の作成は、パソコンでも手書きでも構いません。ただし、手書きの際には書き間違いや字のクセ等には十分に注意を!字が読みづらい、判定がしづらい場合等には、法的効力が認められない可能性も出てきます。

遺産分割協議書の形式

遺産分割協議書には、特に決まった作成形式はありません。ただし「これだけは必ず記載すべき」という記載内容があるので、ここではそれらを網羅した基本的な形式と書き方のポイントをご紹介します。

【基本的な形式・記載事項】

  1. タイトル
  2. 被相続人(故人)についての情報
  3. 相続人全員の名前、法定相続人全員で協議を行い分割が成立した旨の記載
  4. 相続の内容(相続財産ごとに記載)
  5. 協議書の作成数、保管内容
  6. 協議が成立した日付
  7. 相続人全員の署名、住所、捺印
1.タイトル

書類のタイトルは「遺産分割協議書」でOKです。書類の一番上にわかりやすく記載してください。

2.被相続人の表示

「被相続人の表示」として、故人の情報を記載します。つまり「誰が亡くなって、誰の遺産についての話なのか」をハッキリさせるということです。

【記載事項】

  • 故人の氏名
  • 故人の生年月日:和暦で書きます。例:昭和40年3月18日等
  • 故人の死亡日:和暦で書きます。例:令和3年4月21日等
  • 最後の住所:故人が死亡した時の現住所を記載します。故人の免許証・保険証等を確認し、正確な書き方で書き写しましょう。マンション名等も忘れずに。
  • 最後の本籍:死亡時の本籍地の確認が必要となります。
3.相続人の名前と協議結果について

相続人全員の名前と続柄を書きます。さらに「上記の相続人全員は、被相続人の財産について協議を行い、次のとおりに遺産分割を行うことに合意した。」と書き記しておきます。

4.相続の内容

財産毎に相続内容を記載していきます。ここでは例として、不動産・預金・株券・債務の記載例をご紹介します。

【土地の場合】
次の財産は、被相続人の長男である鈴木太郎が相続する。

所在:××県××市××町1丁目
地番:20番地31号
地目:宅地
地積:60.××平方メートル

※所在や地番は登記簿を確認し、正確なものを記載しましょう。

【建物の場合】
次の財産は、被相続人の妻である鈴木花子が相続する。

所在:××県××市××町1丁目
地番:20番目31号
種類:居宅
構造:木造スレート葺き3階建て
床面積:1F ××・××平方メートル、2F××・××平方メートル、3F ××・××平方メートル

※家屋の場合にはその種類や構造、面積等も正確に記載します。こちらも登記簿等を参照しましょう。

【預貯金の場合】
次の財産は、被相続人の長女である鈴木一子が相続する。

・××銀行 ××支店 普通預金 口座番号12345678
・口座名義人 鈴木××(故人の名前)

※預貯金の場合、銀行名・支店名・口座番号・口座名義人が正確に記されていれば、預金の残高は記載しなくても構いません。

【株券の場合】
次の財産は、被相続人の次女である鈴木二子が相続する。

・有価証券 SBI証券 口座番号 1234-5498 株式会社BBB 株式300株

※口座番号・企業名・株数等は証券会社等からの通知を参照し、正確に記載しましょう。

【葬儀費用・債務の場合】
次の費用・債務は、被相続人の長子である鈴木太郎が負担する。

・被相続人の葬式費用
・被相続人のその他債務

※資産だけでなく、債務やかかった費用の負担等についても協議し、その結果を記載しておくと後のトラブル防止に繋がります。

5.作成数・保管内容

遺産分割協議書は被相続人全員分を作成し、それぞれが管理をします。例えば相続人が5人いれば5通、7人いれば7通の制作が必要です。

:「以上のとおりに被相続人の全員による遺産分割協議が成立したため、これを証するために本書を3通作成し、各自が保管する。」

6.協議制定・協議書作成の日付

遺産分割協議が終了し、被相続人全員の賛同が得られたら、すみやかに協議書を作成しましょう。協議書には必ず、作成した日付も記載します。

:令和3年5月20日

7.相続人全員の署名・捺印

最後に書類への同意を示すものとして、法定相続人全員の署名・捺印が必要となります。

  • 法定相続人の氏名:署名があれば氏名はPC作成でもOK。本籍登録している氏名を記載してください。通名や本籍と異なる簡体字等の記載はNGです。
  • 法定相続人の住所:PC作成でもOK。住民票に登録してある住所。
  • 署名:署名については各自の手書きが必要です。オンライン署名では法的効力が認められないことがあります。
  • 捺印:実印の捺印が望ましいです。

遺産分割協議書作成の注意点

被相続人全員の実印捺印が安心

遺産分割協議書では被相続人全員による署名・捺印が必要となります。この際、ハンコの種類には規定がありませんが、できれば全員が「実印」を捺印している方が安心です。

実印とは?実印とは、自治体(市区町村)に登録した正式なハンコのこと。ハンコは誰でも買えるし作れるものですから、もしかしたら第三者があなたの名前のハンコを作って押す可能性もありますよね。しかし「実印登録」がしてあれば、別のハンコが使われていても「それは実印ではない、自分の同意した契約ではない」と言うことができるんです。

実印は家の購入やローン契約、生命保険加入等の際に求められることが多いので、「大人になると自然に登録した」という人も多いはず。しかし被相続人がお若い場合や、まだ社会人になって間もない場合等だと、実印が無い(実印登録をしていない)ケースも多々あります。

「遺産分割協議書に本人による同意を得ている」という証とするためにも、各法定相続人には実印登録をしてもらい、実印を捺してもらうようにしましょう。実印登録は各自治体の役所で無料で行うことができます。

協議・作成書の作成は早めに

遺産分割協議を行う期限・協議書作成の期限は特に定められてはいません。しかし相続税の申告期限を考えると、そこまでノンビリとはしていられないのが実情です。

相続税の申告は、故人の死亡後10ヶ月後までに行うように期限が定められています。被相続人はそれまでに不動産や預貯金等を相続して、相続税申告を行わなくてはなりません。

不動産や預貯金の相続手続きに「遺産分割協議書」が必要となるケースは多々あります。遅くとも故人の死亡後2~3ヶ月以内には遺産分割協議に入り、すみやかに協議書を作成するようにしましょう。

遺品整理で資産をリストアップしておく

遺産分割協議書作成の際に注意しておきたいのが、「故人の遺産は本当に全部見つけられているか?漏れは無いか?」という点です。

片付けていない遺品の中から資産価値があるものが後から見つかると、思わぬトラブルになることがあります。

【トラブル例その1】
懸命に協議を行って協議書を作成したのに、半年後に故人の自室から通帳が発見された。通帳の預金は1,000万円。協議をすべてやり直し、協議書を再度作成しなくてはならなくなった。

【トラブル例その2】
協議書の作成後に長子が遺品整理を行ったところ、資産価値の高い貴金属が数点発見された。発見者が独断で相続したところ、のちに他の親族に見つかって争いになった。

特に最近では親世帯が独居しており、子・孫世帯が遠方に住んでいるケースも多く、親が亡くなった後の遺品整理が進まずにこのようなトラブルとなるケースが増加している傾向です。

遺産分割協議を行う前に、まず「遺産となるもの、資産価値があるものの何がどれだけあるのか」をきちんとリストアップしましょう。そのためには、故人の住居・遺品を細かく片付けて、何があるのかを把握しておくことが大切です。

【遺品整理専門業者に依頼する】

  • 故人の家が遠方で片付けに行くのが大変
  • ゴミ屋敷等で探索が難しい
  • 仕事などが忙しく片付けが進められない

上のような場合には、専門の遺品整理業者に片付けや探索を依頼するのも手です。専門業者は故人の遺品の中から通帳や株券・貴金属等の貴重品はきちんと分類し、その他の不用品等はまとめて処分してくれます。スピーディに相続関係の手続きに入りたい時にも便利な存在と言えるでしょう。

おわりに

近年では核家族化に伴い、ご家族・親族同士で相続について話し合う機会が減っています。その分だけ、親世代が亡くなったあとになってから親族での相続問題が表面化し、トラブルが激化してしまう傾向も見られているようです。

大きなトラブルとなることを防ぐためにも、できるだけ早く遺産分割協議書の作成に取り掛かりましょう。

 

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