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親が孤独死したら?葬儀・相続・遺品整理の流れ

親の孤独死 遺品整理

親・子・孫世代がバラバラに住む「核家族化」が進む日本では、親や親族が孤独死をするケースが大幅に増加しています。突然「お父さん・お母さんが孤独死されました」と連絡が来た時の対処、想定していますか?どうしたら良いかわからず、途方に暮れてしまう人も多いはずです。

ここでは親や親族が孤独死をした場合の葬儀や相続・遺品整理にまつわる手続きについて、順を追って説明していきます。親が亡くなった時の葬儀や遺品整理で悩むことが無いよう、ぜひ参考にしてみてください。

1.ご遺体の発見・警察での検視

孤独死の場合、ご遺体の発見では次のようなパターンが考えられます。

  1. 大家・不動産管理会社から家族または保証人に連絡 → 家族・保証人が死体発見 → 警察に連絡
  2. (家族との連絡が取れない場合)大家・不動産管理会社が警察に連絡 → 警察・大家がご遺体を発見
  3. 近隣住民等からの通報 → 警察によるご遺体の発見 → ご家族への連絡

最近ではできるだけご遺体を早く見つけるべく、不動産会社が速やかに警察に連絡するケースが多いです。そのため故人の子ども等のご親族は、警察から親の死亡連絡を受けることになります。

検視による事件性の有無の確認

誰にも看取られない「孤独死」の場合、警察による検視が必要となります。事件性の有無を確認しないといけないためです。そのためご遺体は一度警察側が引き取ることになります。(ご遺体の発見が非常に早く、事件性が無いことが速やかに確認された場合には、例外として検視が無いケースもあります)

検視の期間は数日で終わることもあれば、状態によって数週間かかることも。この間、故人の部屋にある金品の類は警察が一時的に没収します。

事件性が無いことが判明するまでは、遺族が勝手に室内に足を踏み入れたり、遺品を動かしたりはできません。

2.葬儀社の手配とお寺(葬儀施設)への連絡

「親が孤独死をした」と連絡があったら、いちはやく決めなくてはならないのが葬儀社の選定です。故人やご家族がお付き合いのある菩提寺(または教会等)があれば、そちらに連絡を取ると、連携した葬儀社を紹介してもらえることもあります。もちろん葬儀社を自分で選んでも構いません。数社に問い合わせをして、費用や説明内容等を比較してみても良いでしょう。

孤独死やご遺体の状態は早めに伝達

ご遺体の状態によっては、警察から直接火葬場にご遺体を運び、火葬をしてからの通夜葬儀となるケースもあります。警察での検視中であること、ご遺体の状態等についても、早めに葬儀社に申し伝えておきましょう。

通夜葬儀の種類と料金相場

孤独死であるからといって、通夜葬儀にかかる費用にはそこまで大きな変化はありません。葬儀の種類による大まかな相場は以下のとおりです。

  • 一般葬:故人の友人、会社関係者等も参列可能な通常の葬儀。葬儀費用は標準で100万円~200万円
  • 家族葬:家族や身近な友人等で行う少人数型の葬儀。費用相場は50万円~100万円
  • 一日葬:通夜を省略して一日で葬儀・告別式・火葬を済ませる。相場は30万円~50万円
  • 直葬:通夜葬儀・告別式は行わず、火葬炉の前でお別れするシンプルなスタイル。相場は10万円~40万円

なお上記は葬儀社に支払う費用であり、この他にお経を読み、戒名を付けてくれるお坊さんにお支払いするお布施(おふせ:10万円~70万円と戒名によっても異なる)や、香典返しのための費用等が必要になります。

なお孤独死の場合は特殊清掃リフォーム等にコストがかかる影響もあり、通夜葬儀・告別式を省略する直葬を選ぶ人が多い傾向です。

3.特殊清掃業者の手配

ご遺体の発見時の状態によっては、故人が住んでいた部屋に死臭が付いてしまっていたり、体液等によって床・壁等が汚れてしまっている場合があります。

死亡現場の片付けはニオイ・汚れともに非常に対応が難しいものであり、細菌感染等のリスクも高いもの。そのため、一般的にはご家族がご自身で孤独死後の清掃を行うことは稀です。特殊な汚れの除去や消毒・消臭対応などに特化した「特殊清掃業者」を選定し、清掃を任せましょう。

特殊清掃+遺品整理ができる業者も

特殊清掃を行う業者の中には、後述する遺品整理(部屋の残置物の整理や分類・処分等)も併せて行える業者もあります。清掃と整理をまとめて依頼することで、スケジュールが円滑に進むだけでなく、料金コストが抑えられることも。

遺品整理を業者に任せる場合、特殊清掃と併せて依頼ができる業者を選ぶのがおすすめです。

※ご遺体の腐敗・損傷が激しいと、お部屋全体に強い死臭(悪臭)が付きます。マスク無しなどで入室すると、数分もしないうちに体調を崩すことも。特殊清掃が終了するまで、マスク等無しで故人のお部屋に入らないようにしましょう。

4.死亡診断書・死体検案書の受け取り

故人が亡くなったことを証明する書類を発行してもらいます。証明書類は葬儀を行うためにはもちろん、その他の各種手続きにも必須です。

通常の死亡手続きの場合ですと、証明書は故人をお看取りした医師が発行する「死亡診断書」となります。しかし孤独死の場合には検視手続き等を行なった後に、警察から「死体検案書」を発行してもらうのが一般的です。

証明書はコピーを取ろう

死体検案書等の証明書を受け取ったら、できるだけ早くに複写(コピー)を複数枚取って、常に所持しておきましょう。各種手続きの際に頻繁に必要となるため、控えがあると便利です。

5.ご遺体の安置・搬送

検死が済むと、警察から葬儀社の死体安置所まで、ご遺体を搬送します。搬送処理等は葬儀社におまかせしましょう。

なおご遺体の状態によっては、警察から火葬場に直行し、すぐに火葬した方が良いケースも。この場合には、次の「6」で行う死亡届の提出と埋葬許可申請を先に行います。

6.死亡届提出と埋葬許可申請

死亡診断書(死体検案書)を受け取ったら故人が亡くなったことを公的に届け出て、それから葬儀を行うための申請も行います。

死亡届の提出

故人の死亡場所、または本籍地、またはご家族(届出人)の居住地の役場窓口で行います。死亡届の提出は、故人の死亡後7日間以内までが期限です。葬儀社に手続きの代行を依頼できます。

埋火葬許可証の申請

ご遺体の火葬を行うために必要な申請です。死亡届の手続きとあわせて役所で行います。こちらも葬儀社に手続きを代行依頼できます。

葬儀日程が決まり次第、ご親族や故人のご友人等、参列予定者に順次、電話等で連絡を行なっていきます。

7.通夜葬儀

孤独死の場合でも、通夜葬儀の準備などには一般的な葬儀と特に大きな差異はありません。基本の流れはすべて葬儀社におまかせできます。気をつけておきたいポイントをいくつかピックアップしました。

遺影や愛用品の準備

参列者がいらっしゃるタイプの葬儀を行う場合、ご遺影や故人の愛用品等を準備しておくことをおすすめします。特に葬儀前に火葬する場合、故人のご遺体にご挨拶ができず、寂しい思いをされる参列客も多いので、故人を思わせる思い出の品があると良いです。

形見分け等は相続会議・遺品整理を終えてから

遠方から親族がいらっしゃる場合等だと、告別式を終えてすぐに形見分けの話をされるケースも少なくないものです。

しかし貴金属品や骨董品等、資産価値ある品物の形見分けはこの時点では避けましょう。資産価値がある品物の形見分けは「相続」に当たるため、今後の相続問題に影響を及ぼします。形見分けは故人の資産状況を確認し、遺品整理をある程度行なってから行った方が、不要なトラブルを避けられます。

8.契約の清算・各種停止手続き

通夜葬儀を終えたら、故人が取り結んできた契約の精算や、各種の解約(または継承・名義変更)手続きに取り掛かります。

賃貸借契約解除(賃貸物件の解約)

故人の住居が賃貸物件であった場合、オーナーまたは不動産管理会社と話し合い、明け渡し日の決定や当日までの家賃の支払い等を行います。(賃貸借契約の保証人・保証会社が立っている場合は、家賃支払は保証人が行うのが一般的です)

なお孤独死の場合、ご遺体発見までの日数が極端にかかり物件家屋に損傷が発生すると、オーナーまたは不動産管理会社側から損害賠償請求を受ける可能性があります。

公共ライフライン等の解約手続き

故人が契約していたガス・電気・水道等の公共機関、またインターネット、クレジットカード、習い事等の死亡による解約手続きを行なっていきます。契約人死亡による解約方法は企業により異なるため、各社公式サイト等から確認しましょう。

「隠れ契約」に要注意近年ではネット上の契約(動画配信等のサブスクサービス、定額制サービス)などを故人が契約しており、親族がそれに気づかずに料金引き落としが続くケースも多く見られています。
 
後述する遺品整理の際に、クレジットカードの明細や請求書・督促状等が無いかをよく確認しましょう。また通帳の口座引き落とし等も細かくチェックし、契約しているものがないかを確認します。

9.遺品整理

遺品整理とは、故人がのこした物的資産のみならず、衣類や食器・家具・日用品など、すべての家財を分類して片付けていく作業のことを意味します。

【1:物品の分類】
すべての品物を次のように分類します。

  1. 貴重品:現金・株券等の有価証券・通帳・宝石類等
  2. 思い出の品:故人の愛用品、アルバム、写真など
  3. リサイクル・リユース可能な品:家電、趣味のコレクション等
  4. 不用品:食器、下着、リネン類、その他不要な家具等(不燃・可燃・資源ごみなどに分類)

【2:形見分け・リユース:リサイクル】
故人のご親族・ご友人等に形見分けができる品物は、お渡しをします。また品物によっては、次のような方法でリユース・リサイクルに回すこともできます。

  • 衣類・着物 → 中古衣類品店舗
  • 書籍・CD → 中古書店、中古レコード・CD店
  • 貴金属品 → 貴金属買取店
  • ブランド品 → 中古ブランドショップ
  • 家財・家電 → リサイクルショップ 等

また近年では、ネット上のフリマアプリ等を使い、故人の趣味のコレクション等を手放される人も多いです。

【3:不用品の処分】
リユース・リサイクルが難しい品物は、自治体指定の方法で処分を行います。粗大ごみ等の処分方法は自治体によって異なりますので、故人の住居がある自治体の役場に確認を取りましょう。

急ぎの時や悪臭対策には遺品整理専門業者を

故人の住居が賃貸物件の場合、発生する家賃を抑えるためにも、できるだけ早く明け渡しを行う必要があります。このような場合には、遺品の分類や処分を専門に行う遺品整理業者に依頼をした方が早いです。プロがスピーディに作業してくれるので、一般的な一人住まいの住居であれば片付けは一日で終ります。

またご遺体発見までに日数がかかり、家財類に悪臭が付いてしまった場合にも、遺品整理業者におまかせした方が無難。無理に自分で作業を行うと体調を崩すだけでなく、不用品処分の際の悪臭等でトラブルとなる恐れがあります。

遺品整理の料金相場

遺品整理の料金は、部屋の広さと荷物の多さで変動します。おおまかな目安となる料金相場は以下のとおりです。

1R~1K 50,000円~80,000円
1DK~2K 90,000円~130,000円
1LDK~2DK 130,000円~170,000円
2LDK~3DK 170,000円~210,000円
3LDK~4DK 210,000円~250,000円
4LDK以上 250,000円~

なお、上で解説した「特殊清掃」と遺品整理の両方をまとめて依頼すると、遺品整理の料金が割安に抑えられることも。ただし翌日・即日といったスピード対応や、ゴミ屋敷等で極端に荷物の量が多いといった場合には料金が上がることもあります。必ず事前に見積を出して貰いましょう。

10.相続関連の準備と手続き

遺品整理等の作業と並行して、故人の資産の相続についても準備や手続きを進めていきます。

戸籍謄本を取得

預貯金の名義変更や相続税申告等、ありとあらゆる遺産相続の手続きで必要になるのが故人の戸籍謄本と相続人の戸籍謄本です。

遺言書を探索

故人の遺産分割についての希望や意思を示す書類が「遺言書」です。遺品整理の際等に故人の部屋を探索し、遺言書を探すほか、法務局への保管・公正役場への問い合わせも行います。

相続人の調査・確定

遺産相続をスムーズに済ませるには、相続人に当たる人間をすべてリストアップしておく必要があります。

相続財産の調査

現金・預貯金・株券や不動産などの総資産の調査を行います。また上記のようなプラスの財産だけでなく、マイナスの資産もよくチェックしておくこと。例えばクレジットカードによる借り入れ、ローン等の債務は、相続人が引き受けることになります。

遺産分割協議

資産が判明したところで、相続人全員による資産分割の協議(話し合い)を行います。相続人全員が同意していない協議は無効となるので要注意。協議がまとまり次第、正式な協議書を作成します。

相続税の申告

相続した遺産について計算してみましょう。「3,000万円+(600万×法定相続人の人数)」の計算式から算出された基礎控除額を越える場合には、相続税の申告が必要です。相続税申告は、故人の死亡後10ヶ月以内なら軽減措置も受けられます。できるだけ速やかに遺産分割協議を終えて、申告を行うようにしましょう。

相続放棄にご注意を親の総資産でマイナス資産(債務)の方が多い場合や、親の遺産に一切触れたくない場合には、早めに正式な「相続放棄」の手続きをしましょう。
 
なおマイナス資産のみの相続放棄はできません。相続放棄をした場合、資産価値がある遺品(現金・通帳・有価証券・貴金属品・骨董品・自動車等)に勝手に触れることができないため十分にご注意ください。
 
また親族の死後、特殊清掃や遺品整理等で親の部屋の片付けに携わると「相続の意思あり」とみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。孤独死の場合、特例として特殊清掃などの対応と相続関連を切り離して考える判例も出てはいますが、100%ではありません。
 
相続放棄をする意思が固まっている場合には、特殊清掃や片付けに取り掛かる前に、弁護士や特殊清掃業者・遺品整理業者等の専門家に相談をしておくことを強くおすすめします。

おわりに

親が親族が孤独死をした場合の葬儀・相続・遺品整理の流れについて説明していきましたが、「やることが多い!」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。実際、親が孤独死をした人の中には、親族を亡くしたストレスに加えて様々な手続きや作業に追い立てられることで、心身ともに疲弊してしまう人が少なくありません。

無理に何もかもを自分で行おうとせず、できるだけ専門家に任せてしまうというのも一つの手です。清掃や遺品整理は専門の業者に、相続関係は弁護士や税理士に任せることで、煩雑な手続きは大幅に省略できます。

最近では、弁護士等の法務手続きや葬儀関連業者もあわせて紹介してくれる遺品整理業者や、遺品の供養、自動車の廃車手続き代行などができる遺品整理業者も登場するようになりました。「親が孤独死をしたけれど、どこから何をしていいか不安でいっぱい」という時には、幅広い手続きができる専門家に頼ってみてはいかがでしょうか。

 

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