親が亡くなったり、ホームに入ったりして実家が空き家になってしまった…最近では日本各地で空き家の売却についての「どうしたらいいんだろう?」とお困りの声をよく聞くようになりました。
実家を出て暮らす人が増えたというだけでなく、高齢者向けの施設が充実してきたことも、空き家増加に影響を及ぼしているのでしょう。
ここでは空き家を売りたい人のために、残置物撤去や不動産売却の流れについて、初めての人にもわかりやすく解説していきます。空き家を上手に売りたい時の参考になる情報をたくさん掲載しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
空き家の名義・登記状態による販売手順の違い
空き家を売る方法ですが、まずその空き家の名義・登記がどうなっているか(家と土地が誰の持ち物ということになっているのか)で売り方が変わってきます。
すでに相続登記済み(名義変更済み)の場合
親・親族が亡くなり、その後の相続手続き・相続登記が終了している場合には、新たな名義人となった人がすぐに空き家の販売を行うことができます。
親族が亡くなったが相続登記前の場合
親等の親族が亡くなって空き家になったが、相続手続きが終了していない場合には、まず名義変更(相続登記)をして、家・土地の名義を相続人のものにする必要があります。
亡くなった親の名義のままで土地を売ることはできません。
相続登記をするまで
- 遺言書を探索・内容確認する
- 法定相続人をすべて確認する
- 不動産以外の相続財産もすべて確認・把握する
- 法定相続人全員による遺産分割協議を行う
- 協議によって不動産相続者となった人が相続登記する
相続登記の方法
相続登記の手続きは、法務局で行います。
相続登記に必要なもの
- 登記申請書(様式は法務局サイトで確認できます)
- 印鑑証明
- 住民票コピー
- 戸籍謄本
- 遺言書(遺言書が発見された場合)
- 遺産分割協議書(法定相続人が複数おり、遺産分割協議書が行われた場合)
親・親族の代理人として空き家を売る場合
親や親族がホームや高齢者施設に入って、親本人が「空き家を売りたい」と考えているけれども手続きをすすめることが難しい…このような場合は、子ども等が「代理人」となり、親にかわって空き家販売を行うこともできます。
委任状の作り方
委任状の作成には、申請書のような様式の統一ルールはありません。次のような項目がまとめられていればOKです。
- 空き家・土地の登記名義人本人の氏名(自筆)と捺印
- 代理人本人の氏名(自筆)と捺印
- 委任状が有効となる開始期限・終了期限
- 委任の範囲
- 売却物件の情報(登記簿謄本の事項の書き写しでもOK) 等
なお委任状作成方法については、不動産会社側でレクチャーしてくれるところも多いです。代理人として空き家を販売したい場合には不動産会社に事前に相談してもよいでしょう。
親・親族が認知症や病気などの場合
親や親族が認知症や重い病気等になってしまい、空き家の販売について意思表示をすることも難しい…このような場合には、子ども等が「成年後見人」となることで、かわって空き家販売を行うこともできます。
成年後見人となるには、裁判所に申し立てを行い、面接・審査の上で審判が決まってから、後見内容の登記が必要となります。手続きがやや煩雑なので、お住まいの自治体の支援センターに相談をしてみると良いでしょう。
空き家の売り方を決める
空き家を手放す場合、家をそのまま残して「中古戸建」または「古家付き土地」として売るか、家を解体して土地を売る方法があります。
中古戸建て・古家付き土地の販売
比較的手間が少ない
現金化がしやすい
販売のためのコストが少なく済む
家の状態によっては買い手がつきにくい
空き家をそのままに売る方法は、売るための手間が少ないのが魅力です。あまり手間をかけずに売りたい場合に向いています。ただし中古家屋があまりにも古く状態が悪い場合等だと、なかなか買主が見つからないこともあります。
更地
土地だけの方が早く売れる地域も多い
一般的に土地価格は古家付きより高くなりやすい
年をまたぐと固定資産税・都市計画税がかかる
販売のための解体コストがかかる
販売までに時間がかかる
空き家を更地にする場合、解体のための費用がかかること、また土地がすぐ売れない場合に税金がかかることが大きなネックです。
【解体費用の目安】
木造の場合 | 一坪あたり5万円~6万円 |
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鉄骨の場合 | 一坪あたり6万円~8万円 |
コンクリートの場合 | 一坪あたり7万円~9万円 |
地域にもよりますが、延床面積が40坪の場合、木造家屋の解体には概ね200万円程度がかかる計算です。近年は人員不足による人件費等の高騰で、解体にさらに費用が嵩むケースも見られています。
ここではできるだけ手軽に空き家を手放す方法として、空き家を解体せずに販売する方法について以下に解説していきます。
空き家の残置物撤去の有無について検討
「空き家を売る」と決めたら、まず取り掛かりたいのが残置物の撤去についての検討です。
空き家買取の場合
空き家買取とは、空き家ごと不動産会社に買い取ってもらう方式です。転売を目的とした不動産会社に直接売るので、時間や手間ががかからないのがメリットとなっています。反面、悪質な不動産会社による買い叩きとなるケースもあるので注意が必要です。
残置物撤去は不要だが費用は取られる
空き家ごと不動産会社に買い取ってもらう場合には、売主側が残置物撤去を行う必要は原則ありません。ただし残置物撤去にかかる費用・手数料を買取価格から差し引かれます。
そのため、自分達で残置物撤去を行うか、自分で探した不用品回収業者に任せた方が費用面としてはオトクと言えます。
購入希望者買取型の場合
購入希望者買取型とは、不動産会社が仲介を行い、買主と売主が売買契約をする空き家の売り方です。買主が見つかるまでに時間がかかる可能性もありますが、買主さえ現れれば、売主側がある程度の希望価格を提案できるなど、空き家の高額での販売も期待できます。
残置物撤去は売主が行う
一般的な空き家販売では、残置物の撤去作業にかかる費用はすべて売主が持つことになります。自分達で残置物撤去の作業を行うか、不用品回収の専門業者に依頼をします。
残置物が無い方が早く売れる?
空き家の残置物は、一般的に「無い」状態の方が早く売れやすいです。これは買主側の見た目の印象が大きいところ。古い家具等が無い方が内覧の際に部屋も広く見えますし、ボロボロの家具等は早く処分した方が家も明るく新しく見えます。
また、残置物が無い状態の空き家の方が、買主・売主の間での残置物問題のトラブルが少ないため、不動産での査定額も上がりやすいです。査定額を上げる影響等も考慮し、早めの残置物撤去をおすすめします。
空き家の査定をしてもらう
空き家を売ると決めたら、空き家の価格査定について取り組みましょう。価格査定とは、つまり「空き家がいくら程度で売れるか」という見積もりを出してもらうこと。ひとつの不動産会社で決めず、複数の会社から査定してもらうのが一般的です。
1)机上査定
机上査定(きじょうさてい)とは、物件の所在地や間取り・築年数などのデータを不動産会社にわたし、ザッと査定額を出してもらう方法です。最近ではネット査定が一般的になり、写真なども加えた机上査定もできるようになりました。
机上査定は不動産会社の立会いや訪問無しで、スピーディに査定額がわかるのがメリットただしデータのみの状態なので、査定額には大きなバラつきが出やすいです。ひとまず「空き家にどの程度の価値があるのか」をザックリ知りたい時向けです。
2)訪問査定
訪問査定は、不動産会社の人間が実際に空き家や土地にやってきて、詳しく現地の状態をチェックした上、その他登記簿の内容確認等も含めてデータを細かく確認して行う査定の方法です。
机上査定に比べ、より精度の高い査定額がわかるのがメリット。その反面、訪問査定の間には原則として売主も同席する必要がありますし、時間と手間はかかります。机上査定の時点である程度は不動産会社を絞り込んでおくのがおすすめです。
ゴミ屋敷状態になっている
できるだけ高く空き家を売りたい
上記のような場合には、実際の細かな査定に入る前に空き家の残置物の撤去をしておくのがおすすめです。所在地・間取りのみの机上査定であれば残置物撤去前に行い、概算を知るためにも行なってOKですが、写真ありの査定、訪問査定を受ける前に残置物撤去を行なっておくと、「状態の良い空き家」として査定額ダウンを抑えられる要素となります。
残置物撤去の作業
空き家査定と並行して、空き家に残された家具や日用品などの残置物撤去作業を進めていきましょう。
自分で空き家の残置物撤去を行う方法
まずは分類を行う
空き家の残置物撤去では、まず次のように荷物を分類していきます。
- 貴重品
- 思い出の品、ご遺品
- その他、空き家から移動させる品
- 不用品(可燃)
- 不用品(不燃)
- 不用品(資源)
- 不用品(粗大ごみ)
- 不用品(リサイクル指定品等)
貴重品や思い出の品は、箱等に別に分類しておくこと。また粗大ごみと残す品が混在しないよう、テープなどで目印を付けておきましょう。
自治体のゴミ処分法をよく確認する
可燃ごみ、不燃ごみの分別方法や、粗大ごみの捨て方などは、自治体によって大きく異なります。空き家の所在地の自治体ホームページをよく確認し、自治体のルールに則って不用品を処分しましょう。
また地域によっては、一気に大量のゴミ出しができないことも。事前に役場のゴミ集積担当や、ゴミ集積所のある町内会等に相談をしておいた方が良いです。
捨てられない不用品もあるので注意
家電リサイクル法で指定された冷蔵庫やテレビ、またバイク等については、粗大ごみでの処分ができません。各自治体の窓口で指定された方法で処分を行います。
取外し家電は業者に依頼
エアコン等の取り外しについては、有資格者による作業が必要です。また電灯などを無理に取り外そうとした結果、天井に傷を付けて査定額ダウン…といったケースも。取り外し装置については無理をせず、業者に依頼しましょう。
業者に残置物撤去を依頼する場合
空き家が遠方である、片付けをする時間がない…このような場合には、不用品回収業者などに空き家の残置物撤去を依頼します。
空き家の残置物撤去にかかる費用は?
空き家・空き部屋の残置物にかかる費用は、大まかに次の通りです。
【残置物撤去の費用相場】
間取り2LDK~3DK | 170,000円~210,000円 |
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間取り3LDK~4DK | 210,000円~250,000円 |
間取り4LDK以上 | 250,000円~ |
大まかに1平方メートル5,000円~15,000円(地域により変動あり)が相場ですが、階段の多さ、搬出のやりやすさ等によっても料金は変動します。事前に業者に見積もりを依頼して、料金を確認しておきましょう。
買取ができる不用品回収業者も
空き家の残置物撤去を行う業者の中には、価値ある品物の買取ができる業者もあります。この場合、撤去費用から買取費用が相殺されるので、残置物撤去のコストが安く済みます。リサイクルショップ等も運営している不用品回収業者だと、様々な品物を買取してもらいやすいです。
バイク廃車や物品供養も依頼可能
業者によっては、空き家の中の残置物回収だけでなく、バイクの廃車や物置の撤廃などもまとめて依頼できるところもあります。また仏壇等の処分しにくい品を、物品供養してくれるところも。このような不用品回収業者を選ぶと、空き家の残置物撤去にかかる手間が大幅に省略できます。
空き家の残置物撤去依頼の流れ
↓
2)打ち合わせ(見積もり・撤去日の決定)
↓
3)スタッフによる荷物の分類
↓
4)スタッフによる搬出
↓
5)不用品処分・買取
空き家の残置物撤去は、専門業者に任せれば早くて1日~2日で終わります。早めに空き家を手放したい場合には、業者に一括で依頼するのがおすすめです。
不動産会社と媒介契約を行う
訪問査定で複数の不動産会社から査定額を出されたり、営業マンとの話し合の中で、「ここに仲介を任せよう」と感じられる会社が決められることでしょう。
売却の仲介依頼をしたい会社が決まったら、その会社との媒介契約を締結します。いよいよ、本格的な売却活動のスタートです。
空き家が売れるまでの動き
中古住宅の売却までの期間は、販売開始から平均2~3ヶ月程度と言われています。空き家が売れるまでに売主が行うことは特にありませんが、次のような点には注意しましょう。
残置物は隅々まで確認を
特にご自分で残置物撤去作業を行なった事例で多いのが、内覧の際に意外な箇所に残置物があった…というケースです。例えば台所の床下収納、あまり使わない部屋の天袋(押入れの上部)、庭の裏側等ですね。
このような場所に残置物があると、購入を考えている買主側からのイメージは大きくダウンします。空き家の残置物チェックは入念に行いましょう。
連絡は常に取れるように
空き家販売の場合、居住しながら中古住宅を売るのとは違い、内覧時に売主が同席する必要は原則ありません。しかし内覧中、購入希望者から質問などがあった場合、不動産会社では対応がしきれないケースもあります。
不動産会社からの電話連絡・メール連絡等は常に取れるようにしておきましょう。
買主との売買契約
空き家の購入希望者が現れ、双方が契約内容を受諾した場合、買主・売主の間で売買契約を交わすことになります。
売買契約は一般的には、売主・買主と仲介業者の三者同席の上で契約書にサインをする方式が取られます。トラブルを避けるためにもこの方法が理想的です。
ただ売主のお住まいが遠方である等の場合には、買主側が先に契約書に署名捺印し、それから売主側に不動産会社が契約書を持って出向き、売主が署名捺印をする方法もあります。これが「持ち回り契約」です。
持ち回り契約は遠方に赴かなくて良いというメリットもありますが、契約内容の認識のズレが双方でおきたり、手付金のタイムラグが出ると言ったデメリットも多い方法です。信頼のできる不動産会社を選ぶことが何よりも重要と言えます。
不動産の引き渡し
売買契約時には契約書と手付金の受け渡しとなり、実際の不動産の引き渡しには1~2ヶ月程度かかるのが一般的です。引き渡しの際に、購入額から手付金を差し引いた額(残代金)が売主に支払われます。
上記をもって、晴れて「空き家が売れた」ことになるわけです。
空き家の不動産販売による税金支払(確定申告)
空き家が無事に売れると晴れ晴れした気分になりますが、その前に忘れてはいけないのが税金の問題です。空き家売却で税金が発生する場合、売却した翌年の春に確定申告する必要があります。
譲渡所得税
空き家を売って得た利益に対して課せられる税金です。
【計算式】
譲渡所得 = 譲渡価格(売却の価格)- 購入時の価格 – 売却費用
【短期譲渡所得の場合】所得税30% 住民税15%
【長期譲渡所得の場合】所得税15% 住民税5%
譲渡費用には仲介手数料や印紙、登記手数料などが含まれます。(正確に計算するには減価償却を考えなくてはなりませんが、ここでは煩雑になりすぎるため省略します)
ただし相続した空き家が一定の条件を満たす場合には、3,000万円の特別控除を受けることができます。
特別控除の条件
- 相続開始より3年目の年末までの売却であること
- マンションではないこと
- 昭和56年5月以前の建築物であること
- 売却時、現行の耐震基準を満たしていること
確定申告は税務署または専門家に相談を
不動産販売(譲渡)で得た税金の申告については、普段の確定申告とは内容が大きく異るため、自営業等で確定申告になれている人でも戸惑うケースが多いです。
事前に税務署の窓口で相談し、申告方法をレクチャーしてもらうか、税理士等の専門家に早めに相談をしましょう。
おわりに
空き家の残置物撤去や不動産販売の流れについて解説しましたが、空き家販売で何より大切なのは「キチンと買主が見つかる」ということです。中古住宅の買主の多くは、買うことを決めた家を「最初の5秒でピンと来た」と言うのだとか。
買主に「ここだ!」と思ってもらえるよう、空き家には残置物をのこさず、換気を良く行なって、好印象を得られるようにしておきましょう!