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家賃滞納による強制執行(強制退去)とは?手続きや流れを徹底解説

家賃滞納による強制執行

「何ヶ月も家賃を払ってくれない」「未納額が膨れ上がっている…」こんな入居者にお困りではありませんか?家賃未納・滞納の入居者を退去させたい!そんな時にこそ検討すべきなのが「強制執行」です。

強制執行とは「家賃を払わない」等の債務を履行しない人に対し、裁判所等の公的機関を通じて強制的に退去を行うことを言います。国を通じ、合法的に強制退去(強制執行)を行うにあたっては、キチンとした手続きを踏むことが大切です。

リサイクルイズミ 久保公人
リサイクルイズミ 久保公人
こんにちは。埼玉県内で第1号の遺品整理士の久保公人(クボ キミヒト)と申します。ここでは家賃を滞納した借り主に対する強制執行について、手続きや流れをできるだけわかりやすく解説していきます。

家賃滞納者に対する強制執行(強制退去)とは

裁判所
強制執行(強制退去)とは、カンタンに言うと「無理にでも入居者に家から出ていってもらう」ということです。もちろんいきなり大家さんが家に入り込んだり荷物を処分したりしたら、それは違法行為となってしまいます。

そこでキチンと手続きを踏んで国に「家賃を払わない入居者が居る」ということを訴え、強制退去の許可を得るわけです。強制執行の判決が降りれば、入居者の家に入り、荷物などを運び出す「明け渡しの強制執行」ができるようになります。

【強制執行のカンタンな流れ】

  1. 強制執行の条件が整っているか確認する
  2. 賃貸借契約を解除する
  3. 訴訟で明渡し請求をする
  4. 判決が出る
  5. 強制執行(立ち退き)

強制執行までの流れ

では実際の強制執行までの流れや手続きを、ステップごとに見ていきましょう。

1.強制執行の条件を確認

家賃滞納による強制執行を検討する前に、まずは「強制執行が適用される条件を満たしているか」を確認しましょう。

【強制執行が認められるための3つの条件】

  1. 一定期間以上の長期の家賃滞納がある
  2. 入居者(借り主)に支払い意思が見られない
  3. 貸主・借り主の信頼関係が壊れている

特に気をつけたいポイントとしては次の点が挙げられます。

滞納期間は「3ヶ月~6ヶ月以上」が目安

強制執行が認められる期間は厳密に定められているわけではありません。しかし「長期の滞納」ということで、基本的には「3ヶ月~6ヶ月」が目安です。1ヶ月程度の短期の滞納や一時的な滞納では強制執行はできません。

支払い意思の有無

滞納者が支払い督促を明確に無視する、大家からの連絡を拒否しているといった「家賃の支払い意思が無いこと」を第三者にも明確に認めさせる必要があります。このために後述しますが「内容証明郵便」等の使用も必要となります。

貸主側の権利濫用が無いか

貸主側(大家)が自己都合で退去を迫っていたり、家の修繕を怠っていた、違法な督促を行ったといった訴えがあると、「信頼関係を築くのを怠ったのは大家側でもある」となり、強制執行が認められないことがあります。

2.借主(家賃滞納者)との交渉・連絡

強制執行に持ち込む前に、家賃滞納者との交渉・連絡をキチンと行いましょう。

1)電話連絡

早朝・深夜等の連絡は避けます。また同日に電話を何度も何度もかけるのはNG。借主の勤務先や連帯保証人以外の親族等への連絡もやめましょう。「相手への精神的苦痛を与える行為」とされると訴えの際に不利になります。

2)自宅訪問

訪問できるのは大家本人または管理会社担当者、正式な代理人のみです。電話と同様に、深夜早朝等の訪問や頻繁な訪問は避けます。張り紙等で「家賃を払っていない」と周囲にわからせるのもNGです。

3)内容証明郵便の投函(督促状送付)

滞納が続いており、入居者との連絡が取れない状態も継続している…こうなったら、督促状(とくそくじょう)を送付します。督促状とは「お金を払ってくださいね、支払いがなければ契約解除します」という、請求書より更に厳しいお金の取り立てのこと。支払い意思の有無を客観的に明示するために、必ず「内容証明郵便」で督促状送付をします。

内容証明郵便とは?内容証明郵便とは、郵便で送った文書について「誰が」「誰に」「いつ」「どのような内容を送ったか」を日本郵便が証明する制度です。これで強制執行の際に「証拠」を作ることができます。内容証明料としての加算料金は440円(税込)。この他、一般書留の料金と郵便料金が必要です。詳しくは郵便局ホームページ等で確認しましょう。

送付する督促状には「7日以内に振込が無い場合には賃貸借契約の解除を行う」といった契約解除通知の旨も必ず付け加えます。ここまでのタイミングであれば、家賃の分割支払い等で譲歩をしてあげるのも良い手です。

4)連帯保証人に連絡

内容証明で督促をしても賃借人本人に連絡が取れない……ここまで着たら、連帯保証人に連絡を取りましょう。賃貸借契約書に名前が書いてある連帯保証人または保証会社に連絡を取って、家賃の支払いを求めます。

連帯保証人へ連絡することを賃借人に内容証明するだけで、で家賃問題が解決することも。「家族の外の人にまで滞納を知られたくない」と焦る人が多いようです。

3.強制退去のための手続き

いくたび連絡を取ろうとしても賃借人と連絡が取れず、支払いの意思は確認ができない……連帯保証人等への連絡でも問題が解決しない場合には、遂に強制執行のための法的手続きに入ります。

1)賃貸借契約の解除を通知する

賃貸借契約の内容にもよりますが、一般的に3ヶ月以上の支払いが無い賃貸借契約は「支払い意思が無いもの」とみなされ解除することができます。

賃貸借契約者本人、ならびに連帯保証人に対して、賃貸借契約を解除する旨の通知を出しましょう。この通知も「内容証明郵便」の形式で出すのが必須です。また通知の際には、支払いが無い場合に裁判・強制執行に移ることも明示してください。

【この他に付け加えるべきポイント】

  1. 裁判に入った場合、裁判費用・弁護士費用は借主に対しての請求となること
  2. 連帯保証人に対しても同じく裁判を起こすこと
2)明け渡し請求申立・訴訟

契約が解除されても借主が家から出ていかない-ーこうなったら遂に裁判所に頼るしかありません。

【用意する書類】

  • 不動産登記簿謄本
  • 固定資産評価額証明書
  • 企業による申立の場合、代表者事項証明書
  • 現状までに送付した内容証明郵便(督促状、契約解除通知等、配達通知書)
  • 賃貸借契約書
  • その他証拠書類
  • 収入印紙(訴額に応じた手数料)
  • 予納郵便切手 6,000円前後
  • 訴状

入居者に対しては貸室(建物)の明渡と滞納家賃の支払を、連帯保証人に対しては滞納家賃の保証債務の履行を求めて裁判を起こします。

裁判の歳、被告である借主が出頭した場合には話し合いによって和解となることも。この場合は、和解調書が作成されます。借主がその内容に従わない(=また家賃を払わない)場合には、今度は訴訟なしで強制執行することが可能です。

ただし家賃滞納のケースだと、相手方(借主側)は裁判に姿を表さず、書面も出さないことがほとんど。そのため大家側が訴状で請求したとおりに判決が出ることが多いです。この場合だと、1回の期日から1週間~2週間前後で判決が出ます。

3)送達証明書を取得

判決文は被告側(借主)が出頭しなくても出ます。ただ強制執行をするにあたっては「判決文書が借主に送られていること」が必要なので、それを証明しなくてはなりません。そのための証明書が「送達証明書」です。

送達証明書は、申請をしなければ交付されません。判決を言い渡した裁判所で手続き申請を行い、証明書を取得しましょう。手数料として150円の収入印紙が必要です。

4)強制執行の申立

判決ならびに送達から1週間~2週間の期日が経過し相手側(借主側)が控訴した場合には、あらためて裁判のやり直しになります。しかし控訴がなければ判決は確定です。ついに強制執行の申立に入ります。

【用意する書類】

  • 判決の正本
  • 申立書
  • 送達証明書
  • 物件所在地の地図
  • 貸主または借主が法人である場合には資格証明書
  • 予納金65,000円(請求相手1名・対象物件1軒の場合)
5)執行官との打ち合わせ

電話または対面で、執行官と強制執行についての打ち合わせが行われます。打ち合わせの日程は申立より数日~一週間以内が原則ですが、裁判所によって打ち合わせ方法・期日に多少の差があります。

強制執行の催告日(明け渡しを伝える日)や、明け渡しの際の実務を行う業者である執行補助者について話し合いを行います。

4.強制執行・明け渡し

1)明け渡しの催告

強制執行が決まったからといって、抜き打ちで明け渡しをするわけではありません。まずは打ち合わせで定めた催告日に、明け渡しをする旨を借主(滞納者)に伝えます。

またこの時に同時に、家屋内部の状況を確認、明け渡しのための下見も行います。大家は催告日には執行官とともに合鍵を使って部屋を解錠し、滞納者に対して通達をします。

合鍵が無い場合には鍵業者に依頼をしなくてはなりませんが、この代金は大家側の負担となります。(ただし申立時に納めた予納金がありますので、その金額を越えた分だけを負担すればOKです。)

2)強制執行(明け渡し)

いよいよ強制執行となります。当日は強制執行担当(執行官)が現場に赴き、滞納者の居住を確認。呼びかけなどに応じない場合には、催告時と同様に合鍵等で鍵を強制的に開けて室内に入ります。

家具や家財等の動産はすべて執行補助者である業者が運び出し、家屋の中は完全に空にします。運び出した荷物はトラックで倉庫に運び保管します。なお明け渡しの家具家財の中に資産価値があるものが混じっている場合には、その場で差し押さえをすることも可能です。

これらの作業にかかるトラック代、作業員代等は、本来は滞納者側(借主側)が負担すべきお金です。しかし実際のところ借主にはお金が無い状態であるわけで、予納金を越えた額は大家側が「立て替える」という形を取って出費するケースがほとんどとなります。

強制執行に失敗しないためのポイント

大家さん側からしてみると、家賃滞納をする借主には早く出ていってほしいものです。しかし焦って対応を行うと、大家側が不利となってしまうこともあります。特に次のような点を注意するようにしましょう。

1.滞納期間は3ヶ月を目安に

家賃の滞納があると気になるものですが、1ヶ月程度の滞納で動き出すのはNG。原則として滞納3ヶ月を目安に動き出すことになります。あまりに早く督促対応等を開始したがために、後の裁判で不利になってしまうことも。「滞納しやすい人だな」とこっそりマークするのは良いですが、焦るのは禁物です。

2.感情的な督促を行わない

「家賃を早く払ってほしい」と思うと、大家さん側はついつい焦った家賃督促をしてしまいがちです。例えば朝早くから電話をかけたり、「電話に出ないから」と何度もかけ直したり、家のドアを大きな音で叩いたり…しかしこれらの行為はいずれも、裁判になった場合に良くありません。

借主側の迷惑になったり精神的負担をかける行動は「大家が精神的な苦痛を与えた」と裁判官に捉えられ、明け渡しの請求が却下されてしまうこともあるのです。督促を行う場合には冷静に、慎重を期するようにしましょう。

3.執行補助者の選定は慎重に

強制執行による明け渡しでは、貸主側(大家・不動産管理会社等)に変わって明け渡し作業を行う「執行補助者」が必要になります。執行補助者に支払う費用は予納金でまかないますが、多くの場合には予納金を上回ってしまうものです。

予納金を超過した費用は理論的には借主側が支払うのですが、実質的には貸主が負担せざるを得ません。執行補助者としては、家財の運搬だけでなくゴミの回収等もすべて任せられる「不用品回収業者」がおすすめですが、中には高額すぎる費用を提示する業者もあります。

明け渡し直前になってから執行補助者を選定しようとすると、焦って悪質な業者を選んでしまう可能性も。執行補助者となる不用品回収専門業者の選定や見積もり依頼は早めに行うようにしましょう。

おわりに

家賃滞納による強制執行(強制退去)の流れについて解説しましたが、情報はお役に立ちそうでしょうか?近年では明け渡し・強制退去の手続きに強い弁護士だけでなく、弁護士と提携した明け渡しに強い不用品回収業者も登場するようになりました。

強制執行の手続や明け渡しの作業にお困りの場合には、このような専門業者に頼ってみるのも良い手と言えるでしょう。

 

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