ご親族が亡くなった時には、別れが辛く悲しいものです。しかしご遺族にはやるべき手続きや届け出がいくつもあります。中には手続きの期限が迫っているものもありますので、できるだけ優先的に手続き・届け出等を行っていくことが大切です。
ここでは親族が亡くなった時、のこされた遺族が行うべき手続きについて、その期限や必要書類等も加えながら解説をしていきます。手続きのお忘れが無いように、ひとつひとつチェックしてみましょう。
目次
- 1 1. 死亡診断書の受け取り【死亡後即時】
- 2 2. 葬儀社・葬儀施設の手配【死亡後即時】
- 3 3. 退院・支払い手続き【死亡後即時】
- 4 4. 死亡届の提出【死亡後7日間以内】
- 5 5. 埋火葬許可証の申請【埋葬火葬手続き前まで】
- 6 6. 葬儀社・葬儀施設への支払い【葬儀後すみやかに】
- 7 7. 健康保険資格喪失届の提出【死亡後14日以内】
- 8 8. 世帯主変更手続きの提出【死亡後14日以内】
- 9 9. 年金受給の停止手続き【おおむね死亡後14日以内】
- 10 10. 介護保険資格喪失届の停止手続き【死亡後14日以内】
- 11 11. 公共料金の解約や名義変更【できるだけ早く】
- 12 12. マンションの解約手続き【できるだけ早く】
- 13 13. 相続放棄手続き【相続を知った日から3ヶ月以内】
- 14 14. 所得税の準確定申告・納税手続き【死亡日から4ヶ月以内】
- 15 15. 相続税の申告・納税手続き【死亡後10ヶ月以内】
- 16 16. 生命保険の請求手続き【死亡後2年~3年】
- 17 17. 自動車の名義変更手続き【相続協議後できるだけ早く】
- 18 18. 不動産の名義変更手続き【相続協議後】
- 19 19. 預貯金の名義変更手続き【相続協議後】
- 20 20. 国民年金の死亡一時金の請求【死亡後2年以内】
- 21 21. 健康保険の葬祭費・埋葬料請求【葬祭執行日から2年以内】
- 22 22. 遺族基礎年金・遺族厚生年金請求手続き【死亡後5年以内】
- 23 おわりに
1. 死亡診断書の受け取り【死亡後即時】
死亡診断書とは、故人が亡くなったことを証明する書類です。火葬や葬儀の際だけでなく、死亡による契約解除の際等にも必要となる重要な書類となります。できるだけ早く書類を受け取りましょう。また書類受け取り後には、何枚分かの複写(コピー)を取っておきます。
病院または医師による発行
故人が亡くなったのが病院の場合は、主治医もしくは担当医が書いた死亡診断書を病院窓口で受け取るのが一般的です。かかりつけ医等が自宅で死亡診断した場合は、その場で医師が死亡診断書を書きます。
いずれも書類発行のために料金が必要となりますが、3,000円~10,000円病院によって料金に幅があるので注意。各種の保険制度は適用できず、全額が遺族の負担となります。
死体検案書となるケースも
事故や事件等で故人が亡くなった場合(突然死・孤独死等を含む)の場合、警察から死体検案書を発行してもらいます。これが死亡診断書の代わりとなります。
2. 葬儀社・葬儀施設の手配【死亡後即時】
葬儀社ならびにお寺や斎場・セレモニーホール等の手配を行います。故人が病院で亡くなった場合、葬儀社を病院が推薦してくれたり、遺体搬送までは病院選定の業者が行うこともあります。
菩提寺や教会等、親族がお世話になっていたお寺や宗教施設がある場合には、すみやかに僧侶等にも連絡をしましょう。
他親族への連絡は日程の決定後
故人の死亡についての連絡は、通夜・葬儀の日程(集合日時や場所)が決定次第行うのが理想的。何度も連絡する手間を省略できます。可能であれば、親族のうちの一名に「連絡係」となってもらった方が、他の方が手続きを速やかに進めることができます。
3. 退院・支払い手続き【死亡後即時】
故人が病院で亡くなった場合には、これまでの入院費用を支払い、退院手続きを行います。故人名義の預貯金等での支払いは避けましょう。遺族名義のお金で支払い、あとから相続時等に請求とした方が良いです。
4. 死亡届の提出【死亡後7日間以内】
死亡届とは、故人がなくなったことを公的に証明するための手続きです。
必要書類 | 死亡診断書 |
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提出先 | 死亡した場所の役所、または故人の本籍地、または届出人の居住地の役所 |
死亡届の手続きは、葬儀社が代行することができます。埋火葬許可証等の手続きも必要なので、葬儀社にまとめて依頼をした方が良いでしょう。
5. 埋火葬許可証の申請【埋葬火葬手続き前まで】
埋火葬許可証の申請とは、埋葬または火葬をすることの許可を役所に取るための申請です。
必要書類 | 埋火葬許可証申請書、死亡届 |
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提出先 | 死亡した場所の役所、または故人の本籍地、または届出人の居住地の役所 |
この申請が無いとご遺体を火葬できないので要注意。一般的には、葬儀社に死亡届と一緒に申請を代行してもらいます。
6. 葬儀社・葬儀施設への支払い【葬儀後すみやかに】
葬儀費用の支払いは、一般的に葬儀直後に現金支払となることがほとんどです。葬儀費用は規模によって大きく異なります。
斎場やセレモニーホールまで僧侶に来てもらった場合には、別途僧侶に対してお布施としてのお礼もお渡しします。お布施の額は50万~100万円と額の幅が広いため、親族内でよく確認をしておきましょう。
7. 健康保険資格喪失届の提出【死亡後14日以内】
保険の受給資格を喪うことを申請する書類です。
必要書類 | 各健康保険証、申請書等(事前確認) |
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申請窓口 | 国民健康保険の場合には自治体の役所窓口、会社の健康保険の場合には勤務先または保険組合窓口 |
健康保険資格喪失届は、保険の内容によって提出書類が異なります。故人の保険証を確認し、該当する保険窓口にまで問い合わせて確認をしておきましょう。
8. 世帯主変更手続きの提出【死亡後14日以内】
故人が世帯主であった場合に必要な手続きです。
必要書類 | 本人確認書類(運転免許証、パスポート等)、認印 |
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申請窓口 | 自治体の役場の戸籍住民課、または市民事務所等 |
なお故人の死亡によって世帯が一人になる場合には、世帯主変更手続きは必要ありません。この手続は代理人が届け出ることもできますが、上記の書類のほか、委任状及び代理人の本人確認書類が必要です。
9. 年金受給の停止手続き【おおむね死亡後14日以内】
故人が受け取るべき年金の受給を停止するための手続きです。停止しておかないと不正受給となります。
必要書類 | 年金手帳、年金証書、死亡届 |
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申請窓口 | 国民年金の場合には自治体の役所の国民年金課、または社会保険事務所。その他年金については加入中の年金窓口に問い合わせ |
期限は国民年金の場合は死亡後14日以内となりますが、年金の種類によっては提出期限が異なることも。事前に故人が加入していた年金を確認しておきましょう。
10. 介護保険資格喪失届の停止手続き【死亡後14日以内】
故人の介護保険の資格を停止するための手続きです。
必要書類 | 故人の介護保険証、あればマイナンバーカード、届出人の本人確認書類(免許証、パスポート等) |
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申請窓口 | 故人の住んでいた市区町村の役場 |
市区町村によっては、この他に認印等が必要となることもあります。故人がお住まいだった市区町村のホームページ等で確認しましょう。
11. 公共料金の解約や名義変更【できるだけ早く】
電気・ガス・水道・インターネット回線・携帯電話等の契約の死亡による解約、または親族への名義変更を行います。
必要書類 | 企業により異なる(主に死亡診断書等や届出人の本人確認書類等が必要) |
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申請窓口 | 主に企業の事業所窓口または郵送窓口 |
亡くなった親族が一人暮らしだった場合には、マンション退去日までには水道・電気等を利用できるようにしておきましょう。
ネット契約に要注意
近年ではインターネットで契約した月額定額サービス(サブスクリプションサービス)等の引き落としが故人の死亡後にも続くケースが散見されています。クレジットカードの請求内容等をチェックし、ひとつひとつ死亡による解約手続きを行っていきましょう。
12. マンションの解約手続き【できるだけ早く】
亡くなった親族が一人暮らしの場合には、契約していたアパート・マンションの解約(退去)手続きを行います。
必要書類 | 死亡診断書、届出人の本人確認書類等 |
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申請窓口 | 故人が契約していた不動産会社または大家 |
解約日が何日先までに設定できるか、家賃の日割り計算は可能かどうか等は、不動産会社によって異なりますので確認しておきましょう
親族だけでの家具や不用品の整理が難しい場合には、遺品整理の専門業者に早めに依頼することも大切。また孤独死等で居室にひどい汚れがある場合には、特殊清掃が必要となることもあります。
13. 相続放棄手続き【相続を知った日から3ヶ月以内】
相続放棄とは、亡くなった親族が残した遺産や負債等のすべての遺品の相続資格を放棄する手続きのことです。
必要書類 | 相続放棄申述書、故人の戸籍謄本、故人の戸籍附票、相続放棄する申請人の戸籍謄本 |
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申請窓口 | 相続放棄する人の住所にある家庭裁判所 |
※通夜葬儀に出ていたり、臨終に立ち会っている場合、「相続を知った日」は故人の死亡日と同じとなります。
なお故人の遺品整理や故人の居室の片付けを行った場合「相続放棄」の意思が無いとみなされ、放棄ができなくなることがあります。相続放棄する場合には、どのような遺品にも触れない方が良いです。
14. 所得税の準確定申告・納税手続き【死亡日から4ヶ月以内】
亡くなった親族が自営業・個人事業主の場合か、給与所得が2,000万円を超過する場合、故人に代わって確定申告を行い、納税もする必要があります。
必要書類 | 死亡年の所得申告書、医療控除証明書、生命保険の領収書、その他経費にかかる領収書等 |
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申請窓口 | 故人が住んでいた住所の税務署 |
故人が懇意にしていた税理士事務所があれば、そこに相談するのが一番はやくて確実です。
15. 相続税の申告・納税手続き【死亡後10ヶ月以内】
故人の遺産を相続した場合には、相続税の申告を行います。
必要書類 | 相続税申告書、故人の戸籍謄本、故人の除籍謄本または住民除票、相続人の戸籍謄本(相続人が複数の場合は全員分)、印鑑証明書等 |
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申請窓口 | 故人が住んでいた住所の管轄にある税務署 |
なお相続した財産が基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を下回る場合には、相続税の申告の必要はありません。
16. 生命保険の請求手続き【死亡後2年~3年】
故人が加入していた生命保険を確認し、「保険金の受取人」が請求手続きを行います。
必要書類 | 死亡保険金請求書等の企業指定の書類、保険証券、保険料領収書、故人の戸籍謄本、死亡診断書、保険受取人の印鑑証明書(※企業によって追加書類が必要) |
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申請窓口 | 故人が加入していた生命保険の窓口 |
17. 自動車の名義変更手続き【相続協議後できるだけ早く】
故人が所有していた自動車を親族が乗る場合にも、遺品である車を廃車や売却する場合にも、名義変更の手続が必要です。ただし車は相続財産にあたるため、相続についての協議が終わってから対処をします。
必要書類 | 車検証、故人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、新しい所有者の印鑑証明、車庫証明書、遺産分割協議書の写し、遺言書等(車の種類や相続形態によって異なる) |
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申請窓口 | 新しい相続人の住所を管轄する陸運支局 |
18. 不動産の名義変更手続き【相続協議後】
土地や分譲マンション等の不相談の名義変更手続きは、相続の分配内容が決定してから行います。
必要書類 | 相続登記申請書、故人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続関係説明図、固定資産税評価証明書、相続人の住民票、遺言書、遺産分割協議書の写し、遺言書等(不動産内容により異なる) |
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申請窓口 | 不動産の住所を管轄する法務局 |
19. 預貯金の名義変更手続き【相続協議後】
故人の預貯金は相続財産となるため、相続の分配等がすべて定まってから名義変更を行います。
必要書類 | 遺言書、検認済証明書、故人の戸籍謄本、相続人と遺言執行者の印鑑証明書、遺言執行者の専任審判書謄本(遺言書が無い場合は、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、相続人全員の戸籍謄本)※金融機関により異なる |
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申請窓口 | 故人の口座があった金融機関の窓口 |
20. 国民年金の死亡一時金の請求【死亡後2年以内】
故人が国民年金を36ヶ月以上収めており、なおかつ老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく亡くなった場合、故人と生計を同じくしていた遺族が死亡一時金を受け取ることができます。
必要書類 | 死亡一時金裁定請求書、除籍謄本、故人の年金手帳、住民票、印鑑、一時金受取先の金融機関口座番号 |
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申請窓口 | 故人がお住まいだった市区町村の役場 |
21. 健康保険の葬祭費・埋葬料請求【葬祭執行日から2年以内】
亡くなった親族が加入していた健康保険から、葬祭料(葬儀にかかった費用)のための3万円~5万円前後の額が支給されます。
必要書類 | 故人の保険証、死亡診断書(写しでもOK)、埋葬費の領収書等 |
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申請窓口 | 国民健康保険の場合は故人のお住まいだった市区町村の役場、または故人の加入していた健康保険組合窓口 |
健康保険の内容によって、提出書類が異なる場合があります。事前に窓口に確認を取っておくと安心です。
22. 遺族基礎年金・遺族厚生年金請求手続き【死亡後5年以内】
一定の条件を満たす妻子や親族には基礎年金(厚生年金の場合には遺族厚生年金)が支給されます。
必要書類 | 国民年金遺族基礎年金裁定請求書、故人の戸籍謄本、年金手帳等 |
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申請窓口 | 国民年金の場合には故人の住所の市区町村の役場(国民年金課等)、厚生年金の場合にはその窓口 |
ただし年金加入者の加入年月や年金額、ご遺族の所得の状態等によって、遺族基礎年金の支給額はかわります。
おわりに
親族が亡くなった場合、遺族が行うべき22の手続きについて上では挙げていきましたが、これらは「確実に行うべき手続き」に過ぎません。のこされたご遺族は、この他にも家具や日用品等を片付けたり、法事を執り行ったり、故人の遺品を分配するといった細々とした作業を行う必要があります。
とは言え、例えば税金関連の手続きは税理士でも代行ができますし、相続関連については弁護士におまかせすることも可能です。また近年では、遺品の探索や片付けをプロの遺品整理業者にまかせる人も増えてきました。
特に親族が遠方にお住まいだった場合や、お仕事等が忙しく片付けや手続きがなかなか進まない…といった場合には、「代行可能な作業は専門業者に任せる」という方法を検討してみるのも良い手と言えるでしょう。