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相続した家は売却?賃貸?空き家?利点欠点を徹底比較

相続した家

親や親族が亡くなって家を相続した時、その扱いに悩む人は多いことでしょう。相続した家は売ることもできますし、賃貸物件として貸し出すことも可能です。また「空き家のままで置いている」という人も少なくありません。

亡くなった親の家は、売却と賃貸のどちらがベストなのでしょうか?また空き家のままで置いておいても大丈夫なのでしょうか?今回は親の家を相続した場合の家の扱いについて、それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。

親の家を売却する場合

まずは亡くなった親の家を売る場合のメリット・デメリットを見ていきます。

親の家を売るメリットは?

まとまった現金が確保できる

相続した家を売却するメリットは、なんといっても一度にある程度まとまった現金が確保できるという点でしょう。もちろん次のような費用は必要になりますが、手数料や印紙代等の出費は100万~150万前後で済むケースが多いです。

売却に必要な手数料例 仲介手数料
印紙代
抵当権抹消登記費用 等

家屋や土地の場所や資産価値にもよりますが、数千万単位での現金が一時に手に入るケースも珍しくありません。

「別の土地家屋を買いたい」「自分用の高齢者向けマンションを契約したい」等、近いうちにまとまった出費が必要となりそうな場合には、親の家を売却して現金確保をするのも良い手と言えるでしょう。

中古住宅としての販売も可能

かつては木造住宅等は築30年を超過すると「耐用年数を超えている」と捉えられやすく、売却時に家を潰して更地にしないとなかなか売れませんでした。

しかし近年では、中古住宅をリノベーションして暮らしたり、古民家を店舗として利用するといった需要も増えています。家がある地域によっては中古住宅のまま販売することも可能であり、解体費用の負担を抑えることができます。

特別控除が受けられる

相続によって空き家となっている不動産については、適用要件を満たした場合(相続日から一定期間内)であれば、「空き家の3,000万特別控除」を受けることができます。

これは土地家屋を売って売却した所得から3,000万円までは税金の所得控除となる仕組みです。控除を上手に使うことで、余分な税金を払うことなく、現金を得ることができます。

現金での資産運用ができる

亡くなった親の家を売れば、得た現金を使って資産運用をすることも可能です。

現金による資産運用であれば、株式投資や投資信託等、運用方法は自由自在。資産運用に自信がある方ならば、まとまって得た現金をさらに増やすことも期待できます。

親の家を売るデメリットは?

建物を潰すタイミングが難しい

「土地を売る」と考えた場合、「更地」と「住宅あり」では「更地」の方が売れやすい傾向があるのは事実です。これは「住宅がある状態」よりも「更地」の方が、新築物件を建てるイメージがしやすかったり、土地が広く明るい印象を与えられるからと言われています。

しかし「売れやすいから」と言って、とにかく家屋を潰してしまうというのも考えもの。更地になった土地がなかなか売れないと、家がある場合よりも固定資産税が高くなってしまうからです。

解体費用を考えた値付けが必要

中古住宅で築30年以上という場合、土地家屋を買う側は「土地を買ってから家屋を潰す」と考えているケースも多いです。

家屋の解体費用の負担が買主側となるか売主側となるかは、ケース・バイ・ケース。しかし「解体は買主側負担」とする場合、販売価格の設定もある程度考えた方が良いでしょう。

買主側は解体費用を負担することも考えて価格交渉に挑んできます。あまり強気な価格設定にしてしまうと、なかなか土地家屋が売れない可能性も出てくるのです。

住宅販売では不用品廃棄・清掃費用が必要

「亡くなった親の家をそのまま潰さず売りたい!」という場合は、次のような費用が必要になります。

  • 空き家の不用品の廃棄
  • 家の中・外(庭等)の清掃

基本的に「家を空っぽ」の状態にして綺麗にしてからの方が、中古住宅は売れやすくなります。

不用品の運搬や廃棄作業は自分たちでも行うことは可能ですが、不用品回収業者・遺品整理業者等に外注し、まとめて済ませてしまった方が手早くクオリティも高い結果となることが期待できるでしょう。

近年では特殊清掃や物置の解体・庭木伐採・庭掃除等もまとめて依頼できる遺品整理業者も登場しています。「家が荒れていて中古物件として売りにくそう」という場合には、このようなオールマイティな遺品整理業者に依頼すると良さそうです。

資産運用が難しい

上のメリットで「現金での資産運用ができる」と紹介しましたが、資産運用は誰でも高利を得られるものではありません。

かつては定期預金に入れておけばそれなりの利子を得ることもできました。しかし現在は銀行の定期預金でも0.02%といった超低金利が続く時代です。一切のリスクの無い定期預金では、多大な増収を見込むことはできないでしょう。

とは言え株式や外貨預金の場合だと、元本割れをするリスクがあります。また10年後・20年後に現金価値が現在と同じまたはそれ以上であるという確証もありません。

土地家屋の売却で一挙に多額の所得を得たものの、資産運用に失敗して大幅にソンをしてしまった悪例もあります。親の家を売却して得た所得を上手に運用するのならば、ファイナンシャルプランナー等の専門家と相談をした方が良いでしょう。

親の家を賃貸物件にする場合

次に亡くなった親の家を賃貸物件にして貸し出す場合のメリット・デメリットを見ていきます。

親の家を貸し出すメリットは?

継続的な収入が期待できる

亡くなった親の家を賃貸物件にした場合、常に借り手がつく状態ならば継続的な家賃収入が期待できます。毎月入ってくる収入は、「ローンの支払に充てる」「老後資金のために積み立てる」等、様々な使い方ができることでしょう。

将来的に住むことも可能

親の家を賃貸物件にしておく場合、土地家屋の権利は所持し続けることになります。例えば「将来的には地元に帰って終の棲家としたい」といった場合、一時的に賃貸物件にして定期収入を得るというケースも多いです。

空き家対策になる

親の家を貸し出して人に住んでもらえば、後述する「空き家によるトラブル」を回避することもできます。

親の家を貸し出すデメリットは?

初期投資の費用がかかる

賃貸物件として亡くなった親・親族の家を貸し出す場合には、最低でも次のような費用が必要です。

賃貸物件の初期投資費用

  • 不用品の搬出・処分費用
  • 清掃の費用
  • リフォーム費用

貸家の場合はもちろん、マンションの場合でも、人に貸す場合にはクロス等の張替え等を行う必要が出てきます。また賃貸マンションでは洋室物件が人気ですから、旧来の和室があるマンションですと洋室へのリフォームが必要となる場合もあるでしょう。

家賃による定期収入を得る前に、ある程度の出費を覚悟しなくてはなりません。

仲介・管理業者の手数料が必要

家を人に貸す場合には、専門の不動産会社(仲介業者)を介してキチンと賃貸借契約を交わすことをおすすめします。「借主が親戚・知人だから」「手数料が惜しいから」等の理由で借主と大家で直接契約を結ぶのは非常にリスクが高いです。

直接契約によるトラブル例 家賃滞納があった時に対応が難しい
「また貸し」等のトラブルが起きやすい
入居審査のミスが起きやすい  等

賃貸借契約でトラブルが起きた場合でも、基本的に法律は「借主側」に強くできています。大家(貸主側)のリスクを最大限回避するための保険としても、専門の仲介業者・管理業者を利用した方が良いことは間違いありません。

資産価値が下がる

一戸建てでもマンションでも、家屋は基本的に一年ごとに資産価値が下がっていきます。例えば「家の近隣に人気のショッピングモールができた」といった特需が無い限り、「家は古くなるごとに価格は下がっていく」と考えた方が賢明です。

例えば10年賃貸物件として貸した家を10年後に「やはり売却しよう」と思っても、10年前と同じ価格で家を売ることはできません。

借り手がつかないリスク

親の家を賃貸物件とする場合、最大のリスクは「長期間借り手がつかない」というものです。人口減少等の理由から全国の賃貸物件の空室率は増加傾向であり、長期的な空き室物件も珍しくなくなってきています。

地方・郊外はもちろん、大都市部でも空室率18~20%を越えるエリアも出てきているのが現状です。新型コロナウイルスによる地方都市の賃貸物件特需・都市部からの流出といった流れはあるにせよ、「賃貸にすれば必ず借りてもらえる」という時代ではなくなってきています。

  • 通勤・通学の人気路線か
  • 立地は?駅から徒歩圏内?時間は?
  • 近隣の商店の状態は?
  • 近隣マンションや貸家の空室率は?

「長期空き室」となるリスクを最大限に回避するためにも、上のような点をしっかりと吟味した方が良いでしょう。

親の家を空き家にしておく場合

最後に、亡くなった親の家を空き家のままにしておくメリット・デメリットを見ていきます。

空き家にしておくメリットは?

マイペースに遺品整理ができる

亡くなった親の家には、家族が暮らしていた頃の思い出の品がたくさん残されている…という人も多いのではないでしょうか。

すぐに売却や貸し家にするのではなく「空き家」としておけば、親がのこした様々な遺品をゆっくりとマイペースに整理する時間を取ることもできます。

好きな時に使い始められる

空き家状態にしておけば、思い立った時にすぐに「自分たちの家やサブハウス」として使い始めることも可能です。ただし家の状態によっては、暮らし始める前に不用品を大量に処分したり、一度専門業者による清掃が必要となるケースもあるので、その点は留意しておいた方が良いでしょう。

空き家にしておくデメリットは?

期間をすぎると特別控除の対象外になる

「家を売る場合のメリット」で解説した「空き家に対する3,000万特別控除」は、以下の2つの条件を満たしていないと適用になりません。

特別控除の条件

  1. 相続してから3年を経過する日の年末(12月31日まで)であること
  2. 2023年(令和5年)の12月31日までに売主に譲渡すること

つまり家を相続してから何年も空き家として放置してから「やっぱり売ろうかな」と思って売却した場合、特別控除がきかずに多大な税金がかかってしまうのです。

また気をつけたいのが、条件2)の「2023年までに譲渡が済んでいる」という点。不動産の売買契約にはあれこれと時間がかかります。「やっぱり家を売ろう!」と思ってから1ヶ月で売って契約して終わり、とはなりません。

「いずれは家を売るかもしれない」という選択肢があるのならば、特別控除が効く現在のうちに、しかもなるべく早く準備を始めるべきと言えそうです。

盗難や放火トラブルのリスクがある

近年増加しているのが、空き家における様々なトラブルです。

空き家のトラブル例 未成年の溜まり場になっておりボヤ騒ぎがおきた
不審者による放火が起きた
ホームレスの「住みつき」が起こっていた
盗難被害に遭った
詐欺グループ等のアジトにされていた
犬猫・猿・鹿等が住み着いていた
不法投棄の現場にされていた  等

空き家によるトラブルは放火騒ぎや犯罪被害といった深刻なものが多い傾向にあります。万一火災で他の住宅にまで延焼が起きた場合等は、土地家屋の名義人が火災保険等で保障をしなくてはなりません。

このような甚大なトラブルを回避するには、次のような対策を取る必要があります。

◆家具類・不用品の撤廃
「住みつき」「溜まり場化」「不法投棄」等を防ぐには、家の中や庭等にある不用品を撤去し、スッキリとした状態にしておくことが大切です。

「家を丸ごと片付けるのが大変」「遠方で片付けに行くのが難しい」という場合には、専門業者に外注をした方が良いでしょう。最近では、鍵を預ければ立ち会い無しで片付けを行ってくれる遺品整理業者もあります。通帳・貴金属等の貴重品があれば仕分けしておいて貰えるので、「価値あるものが捨てられてしまう」といった心配もありません。

◆不動産管理会社または警備サービス業者への依頼
空き家が自宅・職場の近隣にあるという場合には、定期的に空き家を訪れて管理することをおすすめします。

遠方で管理が難しい、物件管理に行く時間が無い…という場合には、不動産管理会社や警備サービス業者の利用を検討しましょう。

おわりに

親が亡くなって誰も住まない家を売るか、貸すか、空き家にしておくか-- この選択には、どれにしてもメリットがあり、デメリットがあります。一概に「売ったほうが良い!」「貸した方が良い!」と言い切れるものではありません。

  • 今後どのような将来設計。老後の計画をしているか?
  • 土地家屋以外の資産状況はどうなっているか?
  • 家屋の管理がしやすい距離に住んでいるか?
  • 将来的に需要が上がる土地家屋か? 

土地・家屋自体の条件はもちろんのこと、売る側・貸す側のご家庭の資産状況やライフスタイルによっても「ベストな選択」は変わってきます。家庭ごとに異なる事情をよく反映させて、全員が納得できる答えを出すことが大切です。

※本記事で紹介している税法や控除内容・空き家関連のデータ等は、いずれも2020年12月現在の情報を元にしています。

 

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