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親族が亡くなった時の保険手続きは?書類や注意点も解説

親族が亡くなった時の保険手続き

親や親族が亡くなった後、忘れてはいけないのが保険関連の手続きです。特に生命保険等の場合ですと、故人の死亡後に自動的に保険金の振込みが行われることはありません。保険金(保険給付金)を受け取るには、家族や親族側がキチンと手続きをする必要があります。また給付金請求には時効もありますので、早めに手続を行うことも大切です。

故人の遺品整理等とあわせて、親や親族の保険関連の手続きもキチンと進めていきましょう。ここでは親や親族が亡くなった後に行う保険手続きについて、詳しく解説していきます。

故人の保険金受け取りまでの流れ

保険金
まずは故人の保険金の受け取りまでの全体的な流れを見ていきましょう。

  1. 加入保険の確認(生命保険、JA、共済、損害保険等)
  2. 保険会社への連絡
  3. 必要書類の準備
  4. 保険金請求手続きの開始
  5. 保険会社による書類受付・支払可否判断
  6. 保険金の受取

すでに故人が加入していた保険がすべて判明しており、提出書類の準備ができている場合にはスムーズに生命保険受取ができることでしょう。

しかし加入保険が不明であったり、提出書類に不備があったりすると、保険金の支払(給付)までに半年~1年以上という長い時間がかかってしまうこともあります。保険金受取の手続きは早めに取り掛かることが大切です。

1.故人が加入していた保険を調べる

保険証券
保険関連の手続きは、故人が加入していた保険を調べることから始まります。今の時代、複数の保険に加入している人は珍しくありません。書類や通帳等から加入状況の手がかりを探していきましょう。

保険関連の書類を探す

次のような保険関連の書類が故人のご自宅・自室に無いか、徹底的に探してみましょう。証券そのものが見つからなくても、控除証明書等から加入保険がわかるケースは意外と多いです。

保険関連書類の例 保険証券
ご契約内容のお知らせ
生命保険料控除証明書 等

預金通帳を確認する

故人の通帳を見て、保険料が引かれていないか確認してみましょう。ただし企業によっては「保険料」と明示しない振替となっている場合もあります。企業名・サービス名に注目してください。

クレジットカードの明細を見る

保険料の引き落としをクレジットカードで行っているケースも最近は増えています。通帳で引き落としが確認できない場合、クレジットカードの明細をチェックしてみましょう。

勤務先に問い合わせる

故人が生前に会社員等で「給与」を受け取っていた場合は、勤務先に問い合わせることで共済等の加入保険がわかるケースもあります。

問い合わせ事項の例 保険料の給与天引きの有無
年末調整時の保険料控除申告書の記載内容 等

上記のような点を、故人の勤務先の保険事務担当者に問い合わせてみましょう。ただし近年では個人情報保護の観点から、電話(口頭)での問い合わせだけで保険加入情報が開示されることはほぼありません。

故人との関係を証明できる書類を持参する等の正式な手続きが必要となりますので、その点には十分ご注意ください。

故人の保険関連グッズを探す

書類や通帳等からでは保険の加入状況がわからない…そんな時には手がかりとして、保険会社のグッズが故人の所持品にあるかどうかを探してみましょう。

保険会社の関連グッズ
会社名入のカレンダー
保険会社名入りタオル
社名入りのメモ帳
保険会社キャラのボールペン 等

上のようなグッズがご自宅や所持品にあれば、その会社と保険契約を交わしている可能性も高いです。「契約照会」の手続きをして、その会社と故人が契約をしているかどうか調べてみましょう。

契約照会手続きとは?

「家にグッズがあった」というような場合、それだけでは故人がその保険会社と契約をしていたかどうかの確たる証拠はありませんね。こんな時には保険金受取の連絡の前に、そもそも故人が契約をしていたのかどうなのか?という確認のための照会手続きをする必要があります。

【契約照会手続きの方法】
次のような必要書類を添えて保険会社に契約照会手続きを依頼します。

  • 死亡診断書
  • 戸籍謄本等、照会依頼者と故人の関係を証明できる書類
  • 免許証・パスポート等、照会依頼者の本人確認証明書類

災害で保険書類が見つからない時は?

自然災害で生命保険関連の書類が見つからず、故人の保険契約状況がわからない場合には「災害地域生保契約照会制度」を利用することができます。

【災害地域生保契約紹介制度の利用条件】
故人が台風・地震・津波等で「災害救助法」が適用された地域に住んでいた
災害による家屋の流出・消失で保険関連の手がかりが失われた
保険書類が無いために保険金の請求を行うことが難しい

上のような場合には、特例として「生命保険協会」が窓口となり契約の有無などを調べてくれます。一社一社に問い合わせをする必要がなくなり、保険金受取までの手間を大幅に軽減できます。

【一般社団法人 生命保険協会:災害地域生保契約照会制度について】
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/search/

2.保険会社に連絡

故人の加入している保険がわかったら、保険の「契約内容」をチェックしてみましょう。保険の給付金請求では、保険証券に記載されている「契約者本人」または「保険金の受取人本人」が問い合わせをする必要があります。

各契約の「受取人」が問い合わせよう

生命保険(死亡保険金の受取)の場合等では契約者ご本人は亡くなっているわけですから、保険会社に連絡ができるのは「保険金受取人(配偶者・子・孫等)」のみです。契約内容をよく確認し、受取人が電話または書面で保険会社に連絡をしましょう。

保険会社との契約が複数あり、保険金受取人がそれぞれ違う場合もあります。このような時も、各契約の受取人本人がそれぞれの会社に連絡をとるようにしてください。

担当者をしっかり確認

保険会社に連絡を取る際には、対応窓口の担当者名・連絡先をしっかり確認しておきましょう。保険金受け取りの手続きにおいては、一度ならず何度も連絡を取ることになります。

3.保険金受取の必要書類を揃える

保険会社に連絡を入れると、保険会社側から保険金請求手続きのための必要書類の案内が送られてきます。どの保険会社でも保険金受取には基本的に次のような書類が必要になりますので、早めに準備をしておきましょう。

1.請求書

保険会社に保険金(保険給付金)を請求するための書類です。請求書の形態は、保険企業によって違います。

保険会社に受取人が連絡を入れると、その他の必要書類と一緒に郵送されることが多いです。保険会社の公式サイトからPDFファイルがダウンロードできることもあります。

2.保険証券(保険証書)

故人が保険会社と契約したことを証明する書類です。証書無しでも保険金受取の手続きを進められる会社もありますが、提出する書類が増える、確認される事項が増える等、かなり煩雑な手続きが必要になります。

保険証券がない場合だと、保険金受取までに時間がかかるケースも多いです。できれば自室や所持品の捜索を徹底して行い、保険証券を見つけることをおすすめします。

3.死亡証明書または死亡診断書・死体検案書

死亡証明書または死亡診断書(死体検案書)は、故人が亡くなったことを証明する書類です。

死亡証明書 生命保険会社の定めた証明書類です。保険会社側から郵送され、故人死亡時の医療機関に提出して医師に記入をしてもらいます。

死亡診断書 死亡直後に主治医もしくは担当医が書いてくれる書類です。受け取り方法は病院によって異なります。

死体検案書 病院以外でご自宅等で亡くなった場合は、検死等の手続き後に「死体検案書」が発行されます。

保険契約から2年以上が経過している場合だと「死亡証明書や死体検案書のコピーでOK」という会社が多いです。しかし契約期間から間もない場合や、保険金の請求金額が高額の場合だと、保険会社が定めた「死亡証明書」が求められる可能性が高くなります。

4.被保険者の住民票(住民票除票)

住民票除票とは、死亡・転出等で市区町村の住民ではなくなったことを証明する書類です。住民票から住民票除票に切り替わった日付等が記載されているため、住民票 / 住民票除票の提出も故人の死亡の証明書類となります。

住民票(住民票除票)は、自治体の役所窓口で請求ができます。発行手続き料金等は自治体によって異なりますので、詳しくは自治体ホームページ等をチェックしてみましょう。

5.受取人の戸籍謄本または戸籍抄本

保険金受取人の故人との関係性等を証明するために、戸籍謄本または戸籍抄本の提出が求められることが多いです。戸籍謄本 / 戸籍抄本のどちらが必要となるかは、生命保険会社によって異なります。

謄本 / 抄本が必要となった場合には、自治体の戸籍住民課等に請求を行いましょう。手数料は450円前後です。近年では郵便で請求が行える役所がほとんどですが、その場合には郵送での請求手続き時に手数料と同額の定額小為替を同封します。

6.受取人の本人確認書類

受取人本人を証明するための書類です。

本人確認書類の例 運転免許書
パスポート
マイナンバーカード 等

このほか請求金額が高額となる場合、「印鑑証明書」の提出が求められることもあります。

7.事故状況報告書(事故・災害の場合)

故人が事故や災害で亡くなった場合には、保険会社から「事故状況報告書」が郵送されてきます。事故の発生状況がわかる人が記入をしましょう。

なお事故発生状況報告書の「事故」は、交通事故だけでなく、転倒・スポーツ中の事故の不慮の事故も含みます。

8.交通事故証明書(交通事故の場合)

故人が亡くなった理由が交通事故の場合には「交通事故証明書」の提出が必要となる場合もあります。交通事故証明書は、事故が起きたという事実証明のための書類です。交通事故の証明書は、各都道府県の交通安全運転センターまたはお近くの警察署で発行申請をすることができます。

4.受取人による請求手続きを開始

保険金受取のための提出書類が揃ったら、保険受取人が請求手続きを行います(郵送または窓口への提出)。その後は生命保険会社による書類受付・支払い可否の判断の工程となります。

支払い期限を確認する

保険会社は約款(やっかん)で、保険金の支払い期限を定めています。支払期限は原則として「請求に必要な書類すべてが到着した日の翌営業日から5営業日~7営業日以内」としている企業が多いです。

ただし次のような場合には、請求から支払いまでの期限が長くなります。

手続き書類が不足している
支払いに必要な事実の確認が必要
医学的・工学的な特別調査が必要

上のような特例における保険の支払い期限ならびに延滞利息については、各会社の約款を確認してみましょう。

故人の保険受取時の注意点

親や親族の保険を受け取る場合には、次の点に注意が必要です。

保険金の差し引きとなるケースがある

故人と保険会社の間に未返済の貸付金がある場合には、元利金が保険給付金(保険金)から差し引かれます。

保険金は税金の対象になる

生命保険の死亡保険金は、相続税・贈与税・所得税(+住民税)のいずれかの課税対象となります。相続税・贈与税のいずれの対象となるかは、故人と受取人の関係性や受取金額等によっても変わります。

いずれにしても、死亡保険金の受取をすると確定申告の必要性があることには留意しておきましょう。

保険金受取手続きは2~3年以内に

死亡保険金給付の申請手続きは、受取人が契約者死亡を知ってから2~3年以内と定められています。(受取期限は契約している保険会社や保険内容によって異なります)

つまり故人が亡くなったことを知っているのに何年も保険受取手続きをしないで放置していると、死亡保険金を受取ることができなくなってしまうのです。特に「親や親族が契約している保険を知らない」「加入中の保険に見落としがあった」といった場合、手続き前に受取期限が来てしまうケースが多く見られています。

故人の部屋の保険証券の探索にはじっくりと時間と手間をかけるべきと言えるでしょう。

故人の保険手続きに困った時には

親や親族が亡くなった時の保険関連の手続きについて「思っていたより大変だ」と感じた人も多いのではないでしょうか。故人の保険手続きで困ったことがあったら、次のような専門家に頼るのも手です。

保険書類の探索は「遺品整理業者」がおすすめ

故人の家を探す時間が無い
故人の家が遠くて片付けや探しものができない
ゴミ屋敷で保険証券や保険グッズが見つからない
どこに保険証券等の貴重品があるのかわからない
故人の部屋に入りたくない

保険書類や通帳等が見つからない、探す時間もなかなか無い…こんな時には、遺品整理専門の業者に依頼をしてみましょう。

有資格者である「遺品整理士」が在籍する遺品整理専門業者であれば、保険関連の書類などの貴重品はキチンと残して、不用品だけを片付けてくれます。最近では親族の立ち会い無しで遺品整理を請け負う業者も登場しました。鍵を預けるだけで遺品整理をしてもらえるので、故人の家が遠い場合でも気軽に依頼ができます。

請求手続きだけなら士業も代行可能

保険関連の手続きは、司法書士や行政書士・弁護士・税理士等でも代行することができます。税理士等であれば保険金受取後の相続税・贈与税等の問題も相談できるので助かりますね。

ただし士業の保険手続き代行業務では、保険証書や通帳・明細等の探索は依頼できません。「親が入っていた保険は何なのか」がわかって初めて、手続き代行業が役に立つ時が来るというわけです。

「親や家族の保険内容がさっぱりわからない」「複数の保険に入っていた可能性が高い」という場合には、まず保険証券や通帳・引き落とし明細等の探索に力を入れることをおすすめします。

おわりに

親や親族が亡くなった時には、遺品整理等のやることが多くて慌ただしいものです。しかし「もう少し落ち着いてから……」と保険の手続き等を後回しにしていたせいで、保険の受取期限があっという間に来てしまうケースも珍しくありません。

「遺品整理や保険金受取の手続きが片付かない」と悩んだ時には、自分だけで何もかも解決しようとせず、はやめに周囲の人や専門家に頼りましょう。

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