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相続したが不要な家を解体したい!流れと手続きを解説

家解体

「親や親族の家を相続することになるが、誰も住まないので解体をしたい…」現在の日本では、このような「空き家の解体」を希望するケースがとても増えています。しかし家屋の解体と一口に言っても「単に解体業者を呼んで行えばOK」というものではありません。

相続した家屋を解体するにあたっては、様々な手続きや申請等も必要となります。ここでは相続した、または相続する予定の不要な家を解体する際の流れや申請等の手続きについて、わかりやすく解説をしていきます。

家屋の登記名義人を確認

まずは家屋の登記名義人を正確に確認しましょう。「実家だから父の名義のはず」と思っていた家屋が、実はずっと以前に亡くなった祖父の名義のままだった…このような事例、実はとても多いのです。

解体工事にあたっては、後で詳しく触れますが「法定相続人が誰なのか」がとても重要になります。登記名義人を確認しておかなくては話が始まらないのです。

登記簿謄本を取得

登記簿謄本(登記事項証明書)の取得は法務局で行います。

必要なもの 交付申請書の記入
手数料600円

現在ではオンライン申請も可能です。オンライン請求の場合、手数料は郵送料込みで1通500円になります。

税理士への相談

空き家を解体する前に、税制の問題について解決しておきましょう。

家屋解体による税制メリット

「空き家の発生を抑制するための特例措置」の一定条件を満たす場合には、譲渡所得の金額から3,000万円までの特別控除を受けることができます。

家屋解体による税制デメリット

家屋がある土地については、優遇措置として固定資産税が最大1/6に抑えられています。ところが家屋を解体した場合には、この優遇措置が受けられません。固定資産税が最大6倍に増加してしまうリスクがあります。

土地も相続するのか、土地売却のタイミングはいつか?等によって、家屋解体によるメリット・デメリットのどちらが大きいのかは変わってきます。税理士等のプロに相談して、事前に解決をしておいた方が良いでしょう。

相続人全員の家屋解体許可

家屋の解体には「法定相続人全員の許可」が必要です。相続人の一人による独断での家屋解体はできません。全員に連絡を取り、家屋解体をしても良いという許可を「文書」で取りましょう。

特に故人が亡くなった直後で相続問題が解決していない時には要注意です。独断で解体を行った結果、家屋以外の相続問題まで大きく拗れてしまう事例もあります。

家屋の解体費用について協議

法定相続人全員の家屋解体許可を得る際、同時に解体費用の協議をしておくのがおすすめです。家屋の解体費用を誰が持つのかについては「こうするもの」という絶対的なルールはありません。一例として、以下のような例をご紹介します。

  1. 解体後の土地を利用する相続人が全額負担
  2. 土地の所有権を持つ人(土地を相続する相続人)が全額負担
  3. 相続人全員で分担(負担割合は相続の割合等を参考)

先に解体工事を行って、後から解体費用協議…となると、どうしても協議が揉めてしまいがちです。費用について全員の納得を得てから工事に入りましょう。

家屋の解体業者を選定

相続人との協議等と並行して、解体業者の選定を進めていきましょう。
解体の費用については、業者が現地調査を行ってから見積もりを出すスタイルが一般的です。

【解体業者のチェック項目の例】

  • 建物の構造
  • 建物の状態
  • 搬入ルート・道路利用の確認
  • 近隣環境の確認
  • 境界線・ブロック塀確認
  • 地中物の確認
  • 工事内容の全チェック

数社の解体業者に見積もりを依頼する「相見積もり」を行う人も多いです。

解体業者と契約

費用面・工事内容等で納得できる解体業者を決めたら、その業者と書面契約を交わします。家屋解体作業は金額が高額となるだけでなく、工事内容が大掛かりとなるものです。口頭・WEB上等での契約のみで終わらせることなく、必ず仔細を記した契約書で契約するようにしましょう。

建設リサイクル法申請

家屋が以下の条件を満たす建築物であった場合には、建築リサイクル法申請が必要となります。

  1. 特定建築資材(コンクリ、コンクリ+鉄、木材、アスファルト+コンクリート)を使用し、床面積合計が80平米以上
  2. 特定建築資材以外の使用だが、請負代金500万円以上

届出は、工事に着手する7日前までに行わなくてはなりません。

届出無しで解体工事を行うと罰金が課せられます。必ず届出しておきましょう。届出方法の詳細については、お住いの自治体(都道府県)に確認しましょう。

道路使用許可を申請

家屋の解体工事のために道路上に作業者を置く、資材用の車を置いて作業する…このような場合には、道路使用許可の申請が事前に必要となります。勝手に道路に車を置いて工事をスタートしてはいけません。無断で工事を開始した結果、最悪の場合、警察が来て工事が一時中断となるといったリスクも考えられます。

道路使用許可申請は、工事を行う管轄の警察署で行います。施工主がご自身で申請することもできますが、解体業者が申請費用を得て、許可申請を代行するのが一般的です。

道路使用許可の申請から受理までには一定の時間がかかります。「絶対に何日」というわけではありませんが、数日~一週間前後は見ておいた方が良いでしょう。

電気ガス水道等の撤去・停止手続き

家屋の解体の際には、電気やガス等の停止手続きや、電線等の有線の撤去手続きが必要となります。

【問い合わせ先】

  • ガス 管轄のガス会社
  • 電気 → 管轄の電気会社
  • 水道 → お住まいの地域の水道局
  • 電話 → NTTまたはご利用の電話サービス
  • インターネット → ご利用のネット回線サービス窓口

なお「水道」については、解体工事の際に必要となるため、工事当日まで止めない方が良いケースも。事前に解体業者に確認を取っておきましょう。

サービスの停止手続き、設備の撤去手続き等については、場合によっては解体業者が代行してくれることもあります。ただ代行申請だと文書(委任状)ベースとなるため、撤去工事等が始まるまでに時間がかかってしまうことが多いです。

本人(相続人)の依頼の場合の方が、申請後のサービス停止や撤去工事などはスムーズに行われます。急ぎの場合には施主ご自身が申請を行った方が良いでしょう。

遺品整理・不用品の処分

解体工事を行う前には、家屋の中にある家具や家財等を処分しておく必要があります。またご家族・ご親族の思い出の品などは選り分けてとっておきたい…という方もいらっしゃることでしょう。

遺品整理や不用品の分別・処分は、もちろん施主ご自身やご家族で行うことも可能です。ただ一軒家すべての不用品を分別して処分するとなると、作業量は膨大になってしまいます。また大きな家財等を動かせない…というケースも珍しくありません。

一軒家まとめての不用品回収処分や遺品整理をスムーズに行うのなら、専門の遺品整理業者(または不用品回収業者)に依頼するのも手です。

遺品整理業者の場合、事前にピックアップして欲しいものを伝えておけば、必要なものは取り分けて不用品を処分してくれます。

なお不用品回収業者の中には悪徳な業者も居るので注意が必要です。

  • 一般廃棄物収集運搬業務許可を持っているか
  • 古物商許可証を持っているか
  • 遺品整理士が在籍しているか
  • 該当地域での実績があるか

上のような点は、遺品整理業者選定の際によく確認しておいた方が良いでしょう。なお近年では、遺品整理と家屋の解体をまとめて行える業者も登場しています。ワンストップでの依頼となる分、費用が抑えられるのがメリットです。家屋解体のコストカットを狙う人はこのような業者を検討してみても良いでしょう。

ブロック塀の所有者を事前確認

解体する家屋と隣家を隔てる「ブロック塀」ですが、かなり時代を遡るものも多いです。隣家と共同費用で建てた塀であったり、実は隣家が多く費用を出していた…といったケースも散見されます。

つまり「確認せずに勝手にブロック塀を壊した結果、お隣との大きなトラブルになる」というリスクが大きいのです。隣家との境界線について、またブロック塀の所有等については、解体業者によく確認してもらうことが大切です。

近隣へのご挨拶

家屋の解体工事を行う場合、近隣の方々への事前のご挨拶は必須です。

解体工事の際には大きな重機が作業をしますので、通常では聞かないような大きな音となります。また足場とシートで防御はするものの、解体の際にはホコリが立つことも避けられません。

もちろん業者側もなるべく騒音や無駄なホコリを立てないように気は配ります。しかし近隣の方々に一切音が聞こえないような工事をするのは物理上できませんから、事前に「ご迷惑をおかけします」とご挨拶をしておくことが大切なのです。

近隣へのご挨拶は、依頼をすれば解体工事業者が代行してくれます。近隣がマンションなどでご不在が多い場合には、文書でのご挨拶でも良いでしょう。

ただ施工主ご本人が工事箇所と同じ地域に今後もお住みになる予定であったり、家屋を更地にした後の転用の予定がある…という場合には、施工主本人による近隣へのご挨拶をしておくことをおすすめします。

足場設置・周辺物の撤去

解体工事を行う前には、高所作業時に作業員が足を置くための「足場(あしば)」を組み立てます。またチリ・ホコリ等が近隣に舞うのを防ぐために「防塵シート(養生シート)」で建物を覆います。家屋を解体する場合でも、改装等をする場合と同じような準備が行われるわけです。

また解体工事を行う前には、屋根瓦や石膏ボード等、家屋の周辺物等を事前に取り除く作業が行われます。「一気に全部を重機で壊す」と思われがちな家屋の解体工事ですが、解体をした後の資材の処分では細かな分別をしなくてはなりません。

ですから解体前に不用品を分別して撤去しておいた方が、作業がスムーズに進められるのです。

解体工事

いよいよ本格的な解体工事に入ります。立地・建物の状態等によって、重機をどの程度使うのか、手作業での解体メインとなるのか等は変わってきます。

また工期についても同様で、建物の面積や構造等での差が大きいです。工期については解体業者に事前に概算を確認しておきましょう。

滅失登記の手続き

解体が完了したら「建物滅失登記(たてもの・めっしつ・とうき」を行いましょう。滅失登記とは「その家屋がなくなった」ということを法務局の登記簿上に正式に記録する(登記する)ことです。

「不動産登記法」では、建物が滅失してから1ヶ月以内にこの滅失登記を名義人(または所有者、法定相続人)が申請することが定められています。申請すべき義務がある人が申請をしなかった場合、10万円の罰金が処せられます。

また滅失登記をしていない土地は勝手に売買をすることもできません。解体完了後には忘れずに建物滅失登記を行いましょう。滅失登記は、建物が所在する地域の管轄の法務局で行います。

【滅失登記に必要な書類】

  • 登記申請書
  • 建物滅失証明書(取り壊し証明書)
  • 解体業者の印鑑証明
  • 解体業者の資格証明または会社謄本(自治体による)

建物滅失証明書は、解体工事業者が工事したことを証明する書類です。業者が法人である場合には法人代表者の印鑑証明書、法人でない場合には個人の印鑑証明書の添付が必要となります。なお、申請書に会社法人等番号を記載している場合には、資格証や印鑑証明書の添付は省略できます。

解体業者選出の際には、上記のような書類をすべて提出可能であるかどうか、よく確認をしておきましょう。なお滅失登記については解体業者が行うものではなく、施主主自身または施主主から依頼を受けた土地家屋調査士、司法書士等が行います。

おわりに

相続をしたが不要な家を解体する場合の流れや手続きを解説しましたが「思っていたよりもやることが多い」と驚いた方も多いのではないでしょうか。

家屋解体をトラブル無くスムーズに終えるには、様々な申請等について気軽に相談できる解体業者を選ぶことも大切です。解体業者選定の際には「解体料金・費用が安い」という点だけでなく、申請や手続きについてのサポート面等も含め、総合的に見ながら判断をしていくことをおすすめします。

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