「遺品整理」とは、故人がのこした家具や衣類・電化製品等の家財のすべてを分類し、人に分けたり不用品は処分したりすることを言います。故人が個人事業主や農家等でご自宅で事業をされていた場合、仕事にかかわる品物なども片付けや処分が必要となるケースも少なくありません。
農家の場合、遺品整理にはいくつかの特徴があり、ご家族自身では片付けが難しいものも多々あります。ここでは農家の遺品整理の特徴や片付け方のコツについて、詳しく解説をしていきます。
目次
農家の遺品整理の特徴
農業を営まれていた故人の遺品整理では、次の3つの特徴があります。
1.農業機械や資材の分類・処分が難しい
故人のお子様・お孫様等が農業を継がず離農をされる場合や、代替わりの際に規模を縮小される場合等には、遺品整理の際に多種多様な不用品が出ることになります。
- 農業機械
- 農業資材
- 電動工具
- 鉄くず
- 農薬 等
これらの中にはゴミとしての分類が難しいものや、自治体の一般ゴミとして処分できないものが多々あります。ご家族がよくわからないままに自治体のゴミ集積所に農業資材等をゴミに出して、不法投棄としてトラブルとなるケースも。ご家族ご自身で遺品整理を行う場合、不用品のひとつひとつのゴミ分類や処分方法について調べ、適切な対処を取る必要があります。
2.仕分け・処分する物量が多い
農家のお宅の場合、まずご自宅が一軒家で故人のご自室・収納スペース等も平均より広いケースが一般的です。また物置や納屋等が敷地内に複数あり、たくさんの物品や使わなかった資材等を貯蔵されている事例が多く見られます。
端的に言えば、仕分けをしたり片付けるべき「ご遺品の量」が、一般的なご家庭より遥かに多いのです。ご家族自身で農家の遺品整理を行う場合、片付けのための人数を多く確保したり、日程を長めに設定することを強くおすすめします。
3.物置や納屋の解体が必要となるケースも
農家の遺品整理の場合では、物置や納屋等の中身の仕分け・不用品処分だけでなく、物置や納屋の解体が必要となるケースも多く見られます。空き家販売のための解体等、理由は様々ですが、近年では不審者等の住みつきや放火等の防ぐ「保安」のために早めに解体するケースが増えているようです。
農家の遺品整理を行う際には、不要な物置・納屋等の解体も視野に入れておいた方が良いでしょう。
農家の遺品整理・片付け方のコツ
農家の遺品整理では、分類や処分に困るものがいくつかあります。ここではそれらの片付け方について解説をしていきます。
農業器具の処分方法
まずは農業器具の処分から見ていきます。農業器具(農具)とは、ここでは比較的小型な農作業用の道具(人力で扱う製品)のことを指しています。
【農業器具の一例】
- 鍬(くわ)
- 鎌(かま)
- 草かき
- 作業用一輪車(ネコ車)
- 小型噴霧器
- 小型耕運機
自治体処分可能なものも
農業器具は農業の方に限らず、一般の方がガーデニング等でも使用する物品です。サイズによっては自治体で可燃ごみまたは不燃ごみとして処分ができます。サイズ超過の場合も、粗大ごみとして処分が可能です。
【粗大ごみの規定・処分に】
故人の住宅がある自治体の「粗大ごみ」の規定について確認しましょう。一般的に一片30センチ~40センチ以上ある物品については「粗大ごみ」の扱いになる自治体が多いです。
粗大ごみの処分方法は自治体により異なります。
- 自分で粗大ごみ集積場まで持込(無料)
- 粗大ごみ窓口に回収申込(有料) 等
粗大ごみの処分方法については、故人の住宅がある市区町村のホームページで「ゴミ分別方法」を確認してみましょう。
ゴミ出しの際には安全に配慮を
可燃ごみ・不燃ごみ・粗大ごみとして農業器具を集積所等に出す場合には、安全に配慮をしましょう。刃物類等をそのまま放置していたり、ビニール袋等に入れるだけでは危険です。
刃物類は新聞紙等で包んで固定する、危険物については張り紙をするといった対策を取りましょう。
農機具の処分方法
次に、大型農機具の処分方法について見ていきます。農機具とは、農作業を行うための専用機械のことを言います。上の農業器具(農具)の違いとしては「電力などの動力を用いる」「大型である」といった点が挙げられます。
【農機具の一例】
- トラクター
- 田植え機
- コンバイン
- 草刈り機
- 動力付き噴霧器 等
農機具は明確に産業用の機械であるため、一般ごみとして自治体で処分することはできません。田植え機やコンバインなどを処分する場合には、いくつかの選択肢の中から選ぶことになります。
1)農協に買取相談する
身近な存在として、農協(JA)への買取相談があります。依頼をするとスタッフが自宅まで訪問してくれて査定・引取まですべておまかせできるので、手軽なのが魅力です。
買取料はあまり高くはありませんが、引取料金がかからないのは嬉しいポイントと言えます。遺品整理にかかるコストをできるだけ抑えたい場合、視野にいれるべき選択肢と言えるでしょう。
ただし買取可能な農機具は基本的に型式が新しいもの、壊れておらず即時で使えるものに限られます。日本では、法律により製造から15年以上経過した農耕具の再販が禁止されているためです。
すべての農機具を買い取ってもらえるとは限らないので、その点には十分にご注意ください。
2)近隣への譲渡
農協では引き取ってくれないがまだ十分に使うことができるこのような農機具の場合には、農家を営んでいる近所の方への譲渡を打診してみるのも手です。
農家さんによっては快く引受をしてくれることもあります。廃業される方への労いの意味や、なくなった故人へのお悔やみの意味を込めて、道具を引き取ってくれる方も少なくないようです。
ご近所とのお付き合いの度合いなどにもよりますが、町内会等に相談をしてみてはいかがでしょうか。譲渡でも名義変更の手続きなどには手間がかかりますので、引き取ってくれる方にお礼をすることは忘れないようにしましょう。
3)農機具買取業者に相談
農機具には専門の買取業者もあります。専門の買取業者の場合、「部品のみ」での買取ができることもあるのが魅力です。壊れていたり状態の良くない農機具でも、農機具専門買取業者であれば、引き取ってもらえる可能性があります。農協でダメだった…という場合、査定を依頼してみるのも良い手と言えるでしょう。
ただし農機具買取業者の中には、訪問査定のための出張費が有料となるところも多々あります。お近くに買取業者が無い場合、出張費がかさんで買取費用と相殺されてしまうことも。出張費がいくら程度になるのかは、よく確認しておきましょう。
4)遺品整理業者・不用品回収業者に依頼
遺品整理業者や不用品回収業者の中にも、農機具の買取や回収に対応している業者はあります。遺品整理業者の場合、農業に使っていた器具以外の家財もまとめて回収や処分・買取を依頼できるため、遺品整理にかかる手間を大幅に短縮できるのが魅力です。
古い農機具は日本国内では再販ができませんが、東南アジア等では需要が大きいです。そのため海外再販ルートを持っている遺品整理業者・不用品回収業者だと、多少の故障がある農機具や古い農機具でも引き取ってくれるケースが多く、この点も魅力と言えます。
農薬の処分方法
次に農薬の処分方法についてです。故人が農業を営まれていた場合の農薬は、空容器も含め、原則として「産業廃棄物」の扱いになります。残っている農薬、未使用の農薬は環境汚染の原因となるため、水路や水道、河川などに流すことは絶対に行ってはいけません。いくつかの選択肢の中から、適切な処分方法を選びましょう。
1)市町村による回収
数は多くありませんが、自治体(市町村)によっては、未使用等の農薬の回収を行っているところもあります。対応している場合には安価で農薬処分ができるため、ひとまず確認をしてみるのは良い手と言えそうです。
また自治体が回収非対応の場合、自治体が推奨する産業廃棄物回収処理業者を紹介してもらえることもあります。自治体の公式ホームページから、ゴミ処理窓口に問い合わせをしてみましょう。
2)農協(JA)による有料回収
多くの農協(JA)では、未使用または使用中の農薬の回収を行っています。農薬の引取について、故人が加入していた農協(JA)に問い合わせをしてみましょう。なお、農協での回収には原則として回収・処分料金がかかります。
引取回収の料金は、処分する農薬の量によって変動するシステムが一般的です。まずは農協(JA)に問い合わせ、料金査定等について確認を取ってみると良いでしょう。
3)処理業者による回収(遺品整理業者含む)
市町村や農協等ではなく、不用品回収業者や遺品整理業者等の専門業者に農薬の処分も依頼するという手もあります。この場合には故人のその他家財等もまとめて回収依頼ができるのでスピーディであり、手間が省略できるのが魅力です。
なお遺品整理業者に農薬の引き取りも依頼する場合には、業者がその自治体での「産業廃棄物回収・処理」の免許をキチンと持っているか必ず確認することが大切です。処理業者の中には一般廃棄物処理の免許しか持っておらず、産業廃棄物処理を適切に行えない業者もあります。
あからさまに処理料金が激安な業者の場合、不法投棄を行っている場合もあるので注意が必要です。産業廃棄物収集運搬業の許可を取っている業者であれば、その旨は必ず公式サイトに明記しています。
農薬は無料譲渡NGなので注意!
農機具についてはモノによっては譲渡が可能であるため「農薬も譲渡ができないだろうか」と考える方も多いようです。しかし農薬の取り扱いについては、農薬取締法や毒物及び劇物取締法等の法律により、厳しい規制が行われています。
農薬の再販(有料での販売)がNGなのはもちろん、たとえ無償譲渡の場合でも、取り扱い者は該当する都道府県の知事に対して届出を行わなくてはならないのです。近年では農薬をメルカリ等で再販・譲渡しようとして、法律違反となりトラブルとなるケースも見られています。
届出を行わない形での農薬再販を行った場合や、虚偽の届出があった場合、対象者には6ヶ月以下の懲役もしくは30万以下の罰金という重い罪状が課せられます。
「遺品整理の費用を抑えたいから」と軽い気持ちで農薬処分をした結果、警察のお世話になるのでは意味がありません。適切な業者や自治体の力を借りて、正しい処分を行いましょう。
農家の遺品整理に「専門業者」が選ばれる理由
農家の遺品整理について見てきましたが「思っていたより農機具や農薬の処分が大変そう」「その他の遺品も整理や処分をしなくてはならないのに…」と考えた方も多いのではないでしょうか。
近年では農家の遺品整理においても、「遺品整理の専門業者」が選ばれることが増えています。これには次のような理由が挙げられます。
1.農機具や農薬もまとめて片付けられる
産業廃棄物収集運搬業の許可をキチンと取っている遺品整理業者であれば、農機具や農薬、農具等もまとめて片付けることが可能です。もちろん故人のご自宅の衣類や家電、家具、日用品なども一緒にお片付けすることができます。
農業関連の不用品回収はこちら、故人としての家電や不用品の回収はこちら…とひとつひとつ手続きをせずに一括にすることで、ご遺族の手間も大幅に軽減することが可能です。
2.家や納屋が一日で片付く
プロの遺品整理業者の場合、遺品整理の片付けは原則として一日、数時間程度で終わります。「いつまでも物を置いておくわけにはいかない」「土地や家屋の販売を考えたい」といった時にも、迅速に片付けを進めることが可能です。
3.遠方の実家の片付けもOK
近年ではお客様から鍵をお預かりし、お客様の立ち会い無しで片付けを進めることができる遺品整理業者も登場しています。「実家が農家で家や納屋を片付けたいけれど、遠くてなかなか片付けができない」こんなときでも、専門業者に依頼をすればスピーディに遺品整理を進められます。
4.納屋や家屋解体ができる業者も
遺品整理業者の中には、物置や納屋、家屋の解体まで対応可能な業者もあります。また乗用車の廃車手続き、自転車の処分、電気やガスの停止手続き等、細かな手続きまで代行依頼できるところも登場するようになりました。
農家を営まれていたお宅の場合、遺品整理で必要となる手続きは多岐にわたります。様々な手続きをまとめて依頼できる遺品整理業者を選ぶことで、ご家族の心理的・物理的な負担は軽くなることでしょう。
おわりに
今回は農家の遺品整理について、その特徴や片付けのコツをご紹介しました。農家の遺品整理はかなり難易度が高く、作業の進めにくい物品の多い代表格とも言えます。ご自身で遺品整理を行う場合には、自治体やJAとよく相談していくことが大切です。
また遺品整理業者に依頼する際にも、品質の高い業者を選ぶことが重要と言えます。遺品整理の料金面だけでなく、農家の遺品整理に実績があるかどうか等をよく確認してから依頼することをおすすめします。