ブログ

親族がアパートで孤独死!原状回復等の対処は?

親族がアパートで孤独死!原状回復

核家族化が進む現在では「親等の親族がアパートで孤独死をした」という事例も増えてきました。孤独死をしてから発見までに長く時間が経過したことで、高額な原状回復費や損害賠償を求められてトラブルとなるケースも珍しくなくなってきています。

親族がアパートやマンションで孤独死をした場合、私達はどのように対処をしていけばよいのでしょうか。ここでは原状回復の内容や、原状回復費用の負担などについて解説をしていきます。

アパート孤独死の「原状回復」とは

特殊清掃作業
原状回復(げんじょうかいふく)とは、賃貸物件を退去する時に、部屋の状態を契約時(入居時)のように戻すことを言います。賃貸アパート・マンションを借りたことがある人なら、引越の時に「原状回復」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

ただし「孤独死」の場合の原状回復は、一般的な場合とはやや内容が異なる場合があります。アパート孤独死の原状回復の内容を見ていきましょう。

残置物撤去(遺品整理)

残置物(ざんちぶつ)の撤去とは、故人が部屋の中に残した家具や家電・衣類・日用品等のモノを全て部屋から運び出すことを言います。これはすべての孤独死で必要になる作業です。

荷物の運び出しについては一般的な引越等でも行うことですから、「なんとなくイメージが湧く」という人も多いことでしょう。

亡くなった方が残したもの(遺品)を整理して仕分けし、貴重品等の必要なモノは手元に残して不用品を処分するこの作業は「遺品整理」とも呼ばれます。アパートでの孤独死の場合、次のような理由から「遺品整理は業者に外注する」という人が多いです。

【遺品整理を外注する理由】

  • 家賃が発生するため、早く荷物を撤去して解約したい
  • 大家から迅速な退去を求められている
  • 故人の家が遠方で、自分たちでの作業が難しい
  • 亡くなった方の部屋に立ち入るのが辛い 等

特殊清掃

特殊清掃(とくしゅ・せいそう)とは、体液の付着や悪臭等、一般的なハウスクリーニングでは解決できない家の汚れを落とす清掃作業のことを言います。「アパートでの孤独死」の中でも次のような場合ですと、特殊清掃が必要です。

【特殊清掃が必要となる例】

  • 自殺
  • 殺人事件
  • 死亡事故
  • ご遺体発見の遅れ
  • ゴミ屋敷 等

孤独死の場合で最も多いのは「ご遺体の発見の遅れ」による特殊清掃のケースです。現場環境にもよりますが、夏場で死後3日、冬場で5~7日以上が経過した場合、特殊清掃が求められる確率が上がります。

特殊清掃では「腐敗臭を近隣に漏らさないために窓をできるだけ開けない」「細菌感染を防ぐ」といった専門家ならではの知識や技術が必要です。そのため一般の方が特殊清掃を行うことはおすすめできず、専門業者への依頼が最適とされています。

近年では前述した「遺品整理」と「特殊清掃」を一挙に行える専門業者も増えています。ご遺体の発見が遅れた場合や、自殺等のケースでは、速やかに特殊清掃・遺品整理の両方が行える業者をあたった方が良いでしょう。

消毒・消臭工事等

ご遺体の発見の遅れが長期間に及んだ場合等では、腐敗によって発生した体液等によるシミが床下にまで及ぶこともあります。このレベルまで汚染が広がると、通常の特殊清掃のみでは腐敗臭を取りきることができません。

この場合、アパート孤独死での原状回復としてはより本格的なリフォームに近い「消毒作業」「消臭工事」等の作業が求められます。

原状回復費用の負担はどうなる?

親族がアパートで孤独死した場合の「原状回復」がどのようなものなのか、なんとなく全体像は掴めたでしょうか。これらの原状回復作業には、業者の外注料金が必要となります。では親族が孤独死した場合、現状回復の費用は誰が負担するのかを見ていきましょう。

【賃貸借契約の内容を確認しよう】

アパートの原状回復費用の負担について話す前に、まずは故人が家を借りたときの賃貸借契約(ちんたいしゃく・けいやく)の契約書を速やかに確認しましょう。

家を借りる場合には、当人のみならず「連帯保証人」または「保証機関(保証会社)」による保証が必要になります。この「連帯保証人(保証会社)」とは、借り主が貸主に対して負う債務を連帯して保証する人のことを言います。

つまり故人(契約者)と同様に、貸主(大家)に対して責任を負うということです。単なる「保証人」とは異なり、借主と同じ責任を負うことになるため、非常に重い責任と言えます。

一般的に、アパート孤独死の場合の原状回復費用の負担については次のような順番で連絡が来ることになります。

  1. 連帯保証人または保証機関
  2. 法定相続人(血縁が近い順番から)

アパートで孤独死があった場合、大家・管理会社とまず話すべきであり、負担の責務を負うのは「連帯保証人」です。法律上のトラブルを防ぐためにも、ひとまずは速やかに「賃貸借契約」の内容を見て、ご自身が連帯保証人であるかどうかを確認しましょう。

連帯保証人ではない場合の原状回復費用負担

「孤独死した故人が親等の親族であっても、自分は連帯保証人には名前を連ねていない」というケースも多々ありますね。本来であれば前述のとおり大家や管理会社は「連帯保証人」と話をするべきなのですが、何らかの事由で連帯保証人と連絡が取れない場合等には、大家や管理会社は故人の「法定相続人」に対して原状回復の費用負担を求めます。

法定相続人とは、故人の配偶者や血族のこと。カンタンに言えば「故人の遺産が貰える人」です。優先順位は次のとおりとなります。

【法定相続人の順位】

  • 必ず相続人になる:配偶者
  • 第一順位:故人の子(長男、長女、次男、次女……)
  • 第一順位:第一順位の代襲相続人(子がすべて死亡している場合の孫)
  • 第二順位:親(父、母)
  • 第三順位:兄弟関係(兄、姉、妹、弟)
  • 第三順位:第三順位の代襲相続人(甥、姪)

例えばあなたの叔父さん、伯母さんが孤独死をしたという場合、あなたは「甥または姪」の立場になりますから、第三順位の法定相続人です。故人に子どもや孫がおらず、親兄弟も亡くなっている場合、早期に原状回復についての話が来る可能性が高い立場と言えます。

相続放棄すれば費用負担は無し

「法定相続人(遺産を貰える立場にある人)」が原状回復費用の負担をするかどうかは、故人の遺産を受け取るかどうかで決まります。

故人の遺産相続を放棄すれば、故人の賃貸借契約を受け継いだことにはなりません。つまりあなたには一切、故人の責任を負う必要は無いということになります。正式に遺産放棄の手続きをした場合には、孤独死の原状回復費用を負担する必要は法律上無くなります。

故人の資産状況をよく確認しよう
「相続放棄」とは、故人の資産も含め、一切の遺品に手を触れないということです。「現金や貯金・株等のプラスの資産や相続するが、アパート契約等のマイナスの遺産は相続しない」という選択をすることはできません。0か100かのいずれかです。

相続放棄をする場合は、故人の資産状況をよく確認することをおすすめします。例えば故人が多額の遺産をお持ちの場合であったり、保険金が下りる場合には、たとえ原状回復費用を負担しても遺産を相続した方がプラスになるというケースもあるからです。

部屋への立ち入り・遺品整理はしない
相続放棄をする場合には、故人の部屋への立ち入りや勝手な遺品整理を行ってはいけません。自室への立ち入りや遺品整理の形跡が見られる場合、「遺品の相続を行った」と認定され、法的に相続放棄をしていないと見なされる可能性があります。

相続放棄は3ヶ月以内に
相続放棄の手続が行えるのは、故人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内です。手続きをすみやかに行っておかないと、自動的に法定相続人として遺産(賃貸契約)を継承することになってしまいます。

遺産相続する場合は話し合いで合意

故人の遺産を相続する場合だと、法定相続人本人が賃貸借契約を解除するまでは「賃借人」としての地位が続きます。そのため故人の親族側が原状回復費用の一部の負担を求められるケースがほとんどです。

すみやかに大家・管理会社の元に赴き、原状回復費用についての話し合いを行いましょう。話し合いでは、次のような負担率で収まるケースが多く見られています。

  • 敷金返還の権利を放棄し「現状回復費用」として充当してもらう
  • 遺品整理・特殊清掃業者を遺族側で選定し実費を負担する 等

なお、どのような負担割合に決定したとしても、大家・管理会社との話し合いの内容は口約束で終わらせてはいけません。家賃負担・損害賠償請求をしないこと等、細かい部分にまで取り決めた合意書を作っておくことをおすすめします。

連帯保証人の場合の原状回復費用

故人の連帯保証人であった場合は、法定相続人のみの場合とは法律上の責任が変わります。連帯保証人は「借り主が支払うべき債務」を、本人に変わって支払う義務があることが法律で定められているのです。

この場合の「支払い義務」には、次のような費用が含まれると考えられています。

【支払い義務の発生例】

  • 特殊清掃等の原状回復費用
  • 明け渡しまでの家賃
  • 共益費
  • 水道光熱費
  • 家賃減収分等の損害賠償
  • 隣人への保障 等

法定相続人の場合と異なり、連帯保証人はその責任を放棄することができません。状況によっては、負担する費用が高額となることも考えられます。

減価償却分の負担は法律上不要

これは孤独死に限らず一般的な引越においても同じことなのですが、借主は減価償却分については交換費用の負担責任を負わないことが法律上で定められています。

減価償却とは、通常の使用での経年劣化が見られる部分のクリーニングについては、大家や管理会社が費用を負担すべきという考え方です。例えば畳等は6年使っていれば減価償却されるため資産価値が0円となりますから、「畳そのものの代金(実費)」等については負担の必要が無いと考えられます。

  • フローリング
  • クロス

上のような物の交換費用を全額請求された場合には「汚損していない部分の比率」等を割り出して貰うようにした方が良いでしょう。

ただし「孤独死」の案件の場合、畳の「取替費用(人件費・工賃)」等については連帯保証人側が負担となるケースが少なくありません。また故人が自殺であったり、ゴミ屋敷状態であった場合等、借主側にあきらかな過失があったとされる場合だと、連帯保証人側の負担率が上がる傾向が見られます。

家賃減収分の損害賠償は?

「家賃減収分の損害賠償」とは、殺人や自殺等で部屋の資産価値が低下し今後の家賃設定を下げなければならない分について、大家が連帯保証人に保障を求めることを言います。

例えば10万円で貸していた部屋で自殺者が出て、今後7万円でないと借り手がつかない…となったら、大家は月々3万円をソンすることになりますね。この分の負担が借主側(連帯保証人)に求められるわけです。判例では最大2年分の家賃減収分が損害賠償として認められています。

【裁判になるケースも多い】
このような損害賠償の請求は、得てして高額なものになりがちです。とは言え故人の資産で賄える場合や、保険が降りる場合には、それを費用に当てればそこまで大きな問題にはなりません。

しかしこのような支払い条件が満たされず、さらに話し合いでも解決できない場合には、裁判にまでもつれることもあります。ちなみに裁判例では、家賃減収分の損害賠償については次のような判断がなされるケースが多いです。

【家賃減収分の負担の判例】

  • 病死・突然死による死亡の場合 → 故意ではないため損害賠償は認められない(連帯保証人は損害賠償をしなくても良い)
  • 自殺・ゴミ屋敷等による家賃減収の場合 → 借主の過失や故意が認められる場合、損害賠償が認められやすい(連帯保証人は原状回復費用等の他、損害賠償責任も負うことになる)
大家・管理会社と速やかな話し合いを

故人の連帯保証人であった場合、大家や管理会社側からの話し合いには速やかに応じるようにしましょう。また法律上でも「原状回復費用(実費)の支払い責任はある」とされるケースが多いため、最初から「原状回復を含む費用を一切負担しない」といった強固な姿勢を取るのは良い対応とは言えません。

遺品整理・特殊清掃等の原状回復費用の負担責任があることは理解した上で、連帯保証人側が全額負担とならないように話し合いを進めていくことが大切です。

【専門家に相談するのも手】
特に次のようなケースの場合、大家・管理会社側から求められる原状回復費用・損害倍諸費用の負担率が上がり、費用が高額になりやすい傾向が見られます。

  • 自殺
  • 殺人事件
  • 生前からのゴミ屋敷問題
  • 生前からの住居トラブル
  • 家族への連絡不通による遺体発見の遅れ 等

「大きなトラブルになりそう」という場合には、自分たちだけで問題を解決しようとせず、早めに弁護士等の専門家に相談するのも手です。

おわりに

アパート・マンションでの孤独死における原状回復費用の負担については「ケースバイケース」が現状であり、法律上でハッキリした負担率が定められているわけではありません。弁護士によっても費用の負担責任や負担率についての解釈は異なるところがあり、一概に「これが正しい」とは言い切れないところがあります。

例えばレアケースではありますが、賃貸契約書に「連帯保証人の原状回復費用負担」についての記述が無く、そもそも連帯保証人に契約上の責任が問われなかったという事例もあるのです。

  • 賃貸契約書の内容をよく確認する
  • 部屋の状況を詳細に把握するために専門業者を利用する

以上の2点は不要な齟齬を減らすためにも、非常に重要なポイントと言えます。

 

PAGE TOP