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遺品を売ると税金がかかる?遺品整理の注意点

税金

遺品を整理する際に、不要な遺品を売却する方は年々増えています。いくら遺品が思い出の品物と言っても、そのすべてを手元に置いておくことは現実的に難しいもの。「使わない遺品を保管しておくより、喜んで使ってくれる人の元へ譲りたい…」そんな思いから、遺品を売るという方も多いようです。ネットオークションやフリマアプリが浸透して、中古品の売却を気軽に行えるようになったということも、遺品売却が一般的となった理由のひとつと言えるでしょう。

ただし遺品を売った場合には、相続税や所得税・住民税が発生する場合もあるので注意が必要です。また焦って遺品を売却すると、思わぬトラブルに発展することも。「遺品を売る時に税金がかかるのか?」「この遺品は売っても大丈夫なのか?」これらの点をしっかりクリアしてから、整理した遺品の売却手続きに取り掛かりましょう。

ここでは遺品を売る時の税金の課税・非課税について、また遺品売却の際の注意点についてを、遺品整理に初めて取り組む人にもわかりやすく解説していきます。

売った遺品の税金は?課税・非課税の違い

売った遺品の税金?確定申告
遺品を売って得たお金(所得)に税金がかかるかどうかは、次の3つの要素で変わってきます。

  1. 売った遺品の種類
  2. 遺品を売った時の価格(売却額)
  3. 遺品を売って得た所得の合計

それぞれの要素について詳しく説明をしていきましょう。

1.生活用動産かどうか?

売った遺品が「生活用動産(せいかつよう-どうさん)」の場合には、売却して得たお金に税金はかかりません。この生活用動産とは、その名のとおり「生きていくために一般的に必要とされるモノ」のこと。例えば次のような製品は、生活用動産に含まれます。

【生活用動産の例】 一般的な家具や什器
一般的な家電(冷蔵庫、洗濯機等)
日常生活に使用するための衣料品
自転車
通勤に使うための自動車、バイク 等

【例】
遺品のテーブルと椅子を売った → 非課税
遺品のコートを売った → 非課税
遺品のテレビと炊飯器を売った → 非課税

例えば親が亡くなり、日常生活に使っていた家具・家電類や衣料品といった遺品を売っても、原則として税金はかからないというわけです。

超高級品には注意

上の「生活用動産」に分類されるアイテムでも、桁違いに高級なものですと課税の対象となることがあります。

【例】
イタリア製の高級ソファ
スーパーカー
高級なオーディオ
売却額が数十万を超えるブランドバッグ
プレミアが付いたスニーカーやジーンズ 等

同じ「ソファ」や「自動車」でも、抜きん出て高級なものは「一般的な生活で必要となるモノ」ではありませんよね。このような遺産を売却して売却額が一定を超える場合は所得税の課税対象となりますので注意しましょう。

2.贅沢品の売却額は一品30万以上?

では生活用動産にあたらないもの、売ると税金がかかる可能性があるものには、どんなものがあるのでしょうか。

【生活用動産以外の製品例】 宝石
貴金属
アクセサリー
高級着物
骨董
書画
カメラ
楽器 等

とてもカンタンに言えば、生活必需品ではない「贅沢品」と分類できそうですね。ただし、このような遺品のすべてが課税対象となるわけではありません。贅沢品を売却した場合でも、一品(または一組)の売却額が30万円以内の場合には、遺品を売っても税金は非課税となります。

【例】
サファイヤのイヤリングが一組25万円で売れた場合 → 非課税(税金無し)
大島紬の着物が一枚60万円で売れた場合 → 課税対象

売れた時の額が30万円を超えなければ、原則として所得税や相続税の発生を心配する必要は無いというわけです。

金・地金は課税対象となるので注意

次のような品は、上の「売却額30万円以下なら非課税」の原則から外れます。

金地金(ゴールドバー)
金の延べ棒(インゴット)
金貨

これらの「金(地金)」は、売却額がいくらで売れた場合でも課税の対象となります。ただし「金の指輪」や「金のネックレス」の場合にはジュエリー扱いなので、上で解説した「売却額30万円以内」の非課税対象になります。

同じ金でも「地金」と「ジュエリー・宝石類」では扱いが違いますので、十分に注意しましょう。

【例】
金の延べ棒が20万円で売れた場合 → 課税対象、年間の譲渡所得総額によっては税金を払う可能性あり
金の指輪が20万円で売れた場合 → ジュエリー扱いで売却額30万円以内なので非課税

譲渡所得総額は50万以上?

「宝石や書画を売ったら売却額が30万円を超えてしまった」となっても、それですぐに税金を払わなくてはならないわけではありません。

税金の計算では「控除(こうじょ)」という考え方があります。控除とは、一定の金額分までは非課税にするというルールのようなものです。遺品の売却の場合の控除は「譲渡所得の特別控除」と呼ばれます。

譲渡所得の特別控除では、50万円以下は非課税です。つまり一品30万を超えた額で遺品が売れても、すべての遺品を売った所得が50万円以下なら「特別控除」が効くので、払う税金は0円となります。

カンタンな【例】
宝石が40万+着物が5万で売れた → 合計45万円、50万円以内なので非課税
ブランドバッグが30万円+ギターが10万で売れた → 合計40万円、50万以内なので非課税
地金が25万円で売れた → 50万円以内なので非課税

取得費用も計上できる!

「遺品を売ったお金の合計金額が合計50万円を越えている…」こんな時には、遺品の「取得費用」を計算しましょう!「譲渡所得の総額」では、物品の取得費用を計上することができます。カンタンに言えば、その遺品を手に入れるために使ったお金は所得から引いて計算できるのです。

【例】
ブランドバッグを50万円で買い、中古品が100万で売れた場合
 
売上金額100万円 – 取得費用 50万円 = 譲渡所得の総額50万円
譲渡所得の特別控除がきくため非課税
 
【レシートや領収書があれば証明に】
遺品の場合、購入者本人が故人であるため、取得費用を証明するのが難しいことも。しかし故人が物品を購入した時のレシートや領収書があれば、それを取得費用の証明として提出することができます。
 
【取得費用は5%でも計上OK】
取得費用が不明の場合には、売却額の5%までを取得費用として計算することができます。例えば10万円で売れた遺品の場合、5,000円までは取得費用となるので、所得は9万5千円に下がるわけです。

遺品を売る前に!売却処分の注意点

遺品を売る場合には、税金を含めその他様々な気をつけるべき点があります。思わぬトラブルとならないように、次のような点に特に気をつけましょう。

その遺品は相続済ですか?

現金や通帳の資産の相続に比べて、家具や衣料品・骨董品等の物品の遺品については相続手続きを軽く考えてしまう人が多いです。しかし物品の場合でも、相続についての法律は適用されます。つまり「相続が決まっていない物品は、勝手に売ったり処分することはできない」ということです。

親族内で相続の話が決まっていないうちに、誰か1人が早まって宝石や書画骨董品を売却処分してしまい、大きなトラブルとなる…このようなケースは非常に多く見られます。最悪の場合、裁判・賠償というレベルのトラブルに発展することも。十分にご注意ください。

特に売却額が高くなることが見込まれる遺品や、希少でプレミアが付きそうな遺品については要注意です。親族内で相続人について十分に話し合いましょう。全員が納得してから遺品を売却処分することを強くおすすめします。

相続放棄したら遺品は売れない!

近年では、親や親族の遺産を相続しない「相続放棄(そうぞくほうき)」を選ぶ方も増えています。故人に目立った遺産が無く、反対に債務(借金)が残されているばかり…という場合には、相続放棄を考える方が多いことでしょう。

ここで気をつけたいのが「相続放棄をした人には遺品は売ることができない」という点です。法律では「この遺品(借金)は相続しないけれど、こちらの遺品(財産)は相続する」といったような選択型の相続放棄はできません。すべての債務と権利を相続するか、日用品等のすべてを含む遺品(財産)に対する権利をすべて放棄しないとならないのです。0か100かというわけですね。

遺品の売却処分を行うと「故人の財産の処分を行った=財産の相続をしている」と判断され、法的に相続放棄ができないとみなされるケースもあります。

【例】
1、伯母(故人)の遺品のネックレスを売って現金を得た
2、その後、伯母に多額の債務が見つかった
3、遺品の売却行動によって「相続の意思あり」と認められ、相続放棄ができず債務を相続

上の例はあくまでも極端なケースではありますが、この手のトラブルは実は珍しくありません。親・兄弟等の近い家族でも、よく確認してみないと財務状況がわからない、隠れた借金があった…というケースは多いものです。

故人の資産状況はよくよく確認し、相続をすることをしっかりと決めてから遺品の売却に取り掛かりましょう。また相続放棄の意思がすでにある場合には、故人の遺品(物品)に触れるのはやめましょう。

納税相談・確定申告はしっかりと

上でも解説したとおり、一般的な遺品の売却であれば税金の支払いが発生することはほとんどありません。しかし売却額が思いもよらぬ高額になったり、いくつも贅沢品が売れた…という場合には、早めに税金対策に取り掛かった方が良いです。

「計算方法がよくわからない」「納税するレベルなのか判断がつかない」という時には、近くの税務署で相談をしてみましょう。税務署では税金に関する相談を無料で受け付けています。キチンと相談をしたところ特別控除が訊いた、税金を払わなくても大丈夫だった…こんなケースの方が多いんです。

反対に所得税について曖昧なままで確定申告をせずに放置をしていると、「脱税」とみなされてしまいます。一回脱税扱いになってからの追徴課税は重いですし、遺品売却以外の相続についてもチェックが厳しくなります。遺品が高額で売れた時に確定申告をしないことには、デメリットしかありません。

高級品はレシート・領収書を探そう

「譲渡所得の特別控除」でも解説しましたが、高級な遺品の売却では遺品の取得費用が計上できるため、購入時のレシートや領収書が意外と重要になります。

高級着物やカメラ、骨董品、ジュエリー等の遺品を相続した場合には、一緒に購入時の領収書やレシートが無いかを探してみましょう。領収書やレシートがあれば購入店舗や購入時期の証明にもなりますから、中古品売却時の売値が上がることも期待できますよ。

遺品整理で故人の債務状況を確認

故人の遺品(遺産)を相続するか相続放棄をするかは、原則として「故人の死後3ヶ月以内」に意思決定する必要があります。「遺品を売りたいから相続意思をしたい、でも隠れた借金があったらどうしよう…」こんなふうに悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。

故人の資産状況は、遺品の確認をていねいに行うことである程度調べることができます。

【債務状況の確認例】 通帳の引き落とし状況をチェック
クレジットカードの明細を確認
借用書が無いか確認
税務申告の書類を確認
督促状の有無を確認 等

定期的な引き落としが行われている、クレジットカードのキャッシング明細がある…少しでも債務を思わせる要素があった場合には、一度相続を保留してさらに調査を進めた方が良いでしょう。

相続放棄をするかどうかが決定するまでは、遺品の売却手続きについても保留にしておくことをおすすめします。

遺品を売るタイミングを見逃さずに

遺品の種類によっては、長く手元に置いておいた方が税制上優遇されるものもあります。しかし「税金が安くなるから」といって、何でもかんでも遺品を手元に長期保管するのはあまり良い手ではありません。

例えば家電は型式が新しく、新品に近い状態の方が高く売れます。この手の遺品を手放すのなら、早く売る方が圧倒的に有利です。前述したとおり一般的な家電類は売却しても税金が発生しませんので、「高く売るタイミング」の方を優先させた方が最終的にはオトクと言えます。

おわりに

遺品を売る時の税金のかかり方や注意すべき点についての情報はいかがでしたか?遺品の売却や整理・処分においては、税法を含めた専門的な知識を持っているかどうかが重要になってきます。知らずに脱税をしていても「知らなかった」では済まされません。

「自分だけでは遺品を適切に処分できるかわからない」「時間も手間もかけずに適切に遺品を処分したい」と思った時には、遺品整理の専門家である遺品整理業者等に頼るのも手です。有資格者である「遺品整理士」が在籍する遺品整理業者であれば、金や宝石等の高額な製品を含めた遺品全体の適切な対応についても相談することができますよ。

 

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